『破墓/パミョ』チャン・ジェヒョン監督と“ヤバいもの”役の小山力也が日本で再会!「日本でナンバーワンの声優が必要だった」
「韓国人が権威を感じるような声にしたかった」(チャン・ジェヒョン)
小山「監督から最初に言われたのが『自分がお化けであるというような認識は持たず、自然に声を出してください』ということでした。大事にしたのは最初に登場したときのキャラクターの大きさで、あの高さの視点からものを見ようと思いました。現実に至近距離で見て一番恐ろしい大きさっていうのはこのくらいかなと自分で想像して、具体的にはグリズリー(ハイイログマ)がガッと立ちがった時の怖さみたいなのを感じながら演じました。あとはどういう地面を踏んでいるのかなど、皮膚感覚を考えてやるようにしました」
チャン「実は監修の方は『アニメーションをメインに声優活動されている方だとリアリティの面で少し物足りないのではないか』と心配していました。でも、小山さんに来ていただき、いろいろと説明を申し上げて、私の意図を的確にキャッチをしていただいた後で収録に入ると、ワンテイク目を聞いただけで「小山さんはプロだ」と驚いていました」
小山「僕のほうからは『ここに来るまでにどんなストーリーがあったんですか?」「立ち位置はここで間違いないですか?」とうかかがったくらいですね。日本語のセリフですから、最初は『こういう言い回しの方がいいのでは?』とか、『助詞はこう変えたらどうか』ということをお話ししようかと思ったんです。でも、監督が持っているイメージが的確で、音にもとてもこだわっていらっしゃったので、些末なことを言うのはやめて、おっしゃるとおりに演じました。それでよかったと思います」
チャン「音についてものすごく深いこだわりがあったというよりも、“ヤバいもの”が発する声が非常に権威的に聞こえたらいいなと思っていました。そう考えたときに韓国人の感覚と日本人の感覚に違いがあり、まずは韓国での公開を第一に考えないといけなかったので、日本語的には多少の不自然さがあっても韓国人が権威を感じるような声にしたかった。小山さんにはその点を十分に理解して演じていただけました」
――チャン・ジェヒョン監督に最初にお会いしたときの印象はいかがでしたか。
小山「最初は怖い人かなと思っていたんですが、とてもフランクな方でした。だから、ほんとに収録が楽しかったですし、終わってしまうのがもったいないと思いました。プロデューサーや制作スタッフ、エンジニアも若い方中心でみんな仲良くて、和気あいあいとやってらっしゃいました。そんななかでストレスなく、自由に自分の思うままやらせていただけたのがありがたかったですね」
チャン 「映画作りというのは非常に疲れる仕事ですから、食欲もなくなりますし、終わったらすぐ帰宅するというのが通常のパターンなんです。でも、小山さんに演じていただいた日は本当にハッピーな気持ちだったので、終わった後、一緒に私の行きつけの焼肉屋さんに行ってご飯を食べてビールを飲んだのを思い出します。実は一緒にやっているスタッフたちも神経質な人が多いんですが、あの日は気がかりだった問題が解決してみんながハッピーな状況でした」
――どんな問題があったのですか?
チャン「小山さんに合流していただく前、仮編集版を投資家たちに見てもらったのですが、ほかは全部良いけれど“ヤバいもの”の登場シーンにだけ『オーラが全然足りない』と強い不満の声が上がっていたんです。編集上の都合で仮の音声を入れてあったんです。でもその後、小山さんの声が入ったバージョンを観てもらうと、『これはすごいぞ!』ということですぐにOKが出て公開日も決まりました。このことについて小山さんには感謝の気持ちをお伝えしたいと思っていたので、今回、お目にかかれて本当にうれしいです」
小山「こちらこそありがとうございます。完成した映画を拝見しましたが、とにかく引き込まれました。おそらく大変な編集をなさったと思うんですけど、いろんな情報がひとつに集約されていくような演出がされていましたね。自分が出演させていただいた作品ではありますけれど、『もう終わっちゃうの?』と感じました。観客を驚かすようなサスペンスやホラーの場合、びっくりする出来事が終わってしまうと、観ているほうがトーンダウンしてしまうこともありますが、『破墓/パミョ』の場合は新たなエピソードがどんどんつながっていくので、本当に驚嘆しました」
取材・文/佐藤結