『おとうと』で加瀬亮が思い切りテレた、蒼井優の恋人役
吉永小百合主演、『男はつらいよ』シリーズの山田洋次監督で家族の絆を描く『おとうと』(1月30日公開)に出演した加瀬亮にインタビュー。彼の役柄は、吉永扮する吟子の娘・小春に思いを寄せる好青年・亨(とおる)役だ。小春役の蒼井優とは何度も共演しているので、爽やかな恋人役を演じるにあたりテレがあったと言う。
実はこのふたり、『ハチミツとクローバー』(06)、ドラマ「蒼井優×4つの嘘 カムフラージュ」(08)でも共演した勝手知ったる仲なのだが、『おとうと』でカップルを演じてみた感想は? 「お互いよく知っているからこそ、やりにくかったですね(苦笑)。どれだけ自分たちが役柄から遠いかを知っていると、今回みたいな関係を演じる場合、ちょっとした障害になるんです」。
ふたりが演じた役は、それほどまでに素のふたりと違ったのだろうか? 「全然違いました。僕、全然爽やかじゃないですし(笑)。お互いに言葉には出さないですけど、絶対に蒼井さんもそう思っていたと思いますよ」と笑いながら答える加瀬。
蒼井優も小春のキャラクターとはかなり違うのだろうか? 「そうですね(笑)。だから、ふたり共、最初はテレていたのですが、始まったらそうは言ってられないということがすぐに分かって」。
それはそうだろう。相手は、日本映画界を牽引してきた大ベテラン、山田洋次監督だ。そこで、“できる”ふたりは固くタッグを組むことにしたと言う。「監督の演出に応えないといけないので、暗黙の了解ですぐに協力し合うようになって(笑)。蒼井さんは共演する度に本当に力のある女優さんだと思います。だから気持ちを入れ替えてからは一気に頼もしい味方になりました」。
山田組初参加の加瀬は、監督の演出をとても新鮮に感じたと言う。「今まで自分は割と感じたままにやってきたのですが、今回は違いました。些細なことですが、人が汗を拭いたり、太陽がまぶしくて手をかざしたりと、ひとつひとつの仕草で季節感を表したりするんです。そういう小さな積み重ねで日常の世界ができていく。それが不思議で、すごく面白かったです」。
本作の後は、北野武監督作『アウトレイジ』(2010年公開)、ガス・ヴァン・サント監督作も控えている加瀬。名だたる巨匠から引っ張りだこの人気者だが、山田監督の現場を踏んだ経験も、俳優として大きな糧になったに違いない。ぜひ、加瀬が奮闘した、とっても好感度大の好青年・亨に会いに行って!【Movie Walker/山崎伸子】