声優・花澤香菜「年齢を重ねるごとに楽しくなっている」悩みの時期に出会えたキャラクターとは?
透明感あふれるボイスと確かな演技力で人気を誇る声優・花澤香菜。映画『僕のワンダフル・ライフ』(9月29日公開)では、日本語吹替え版の声優にチャレンジ。聡明で溌剌とした魅力のある女の子に命を吹き込んだ。「年齢を重ねるごとに、どんどん声優というお仕事が楽しくなっている」と充実感とともに邁進している彼女。悩みの時期に出会えた、転機となった役柄について語ってくれた。
ラッセ・ハルストレム監督が全米ベストセラー小説「野良犬トビーの愛すべき転生」を映画化した本作。犬のベイリーが、命の恩人である飼い主・イーサンに会うために姿を変えながら何度も生まれ変わる姿を描く。花澤はイーサンのガールフレンド、ハンナ役を担当した。
「ハンナはしっかりしていて、大人っぽい女の子。でもガハハと笑ったりする無邪気なところもあって。とても魅力的な女の子です」と演じた役柄について、愛情たっぷりに語る花澤。演じる上では「日本のティーンの女の子と比べて、大人っぽい感じがしました。将来やイーサンについての考え方もとても大人。しっかりしているという印象があったので、大人っぽい雰囲気を大事にしました」と語る。
海外ドラマ「ゲームシェイカーズ」では初の海外ドラマの吹替えにもトライしているが、アニメと実写の吹替えでは、どんな違いがあるだろうか。「海外の実写の吹替えをやると、文化の違いを感じることが多いです。海外の方は表情筋をすごく豊かに使うんですよね。だからこちらも、テンションを上げたり、生き生きとした表情で演じるようにしています。ジェスチャーも大きいので、私もマイク前でジェスチャーをしたりしています(笑)」。
人間と犬との宝物のような“出会い”を描く本作。声優、歌手としても活躍する花澤にとって「今の仕事に出会えてよかった」と思う瞬間とはどんなものだろう。「作品を見てくださった方にお会いする機会もあるので、“落ち込んでいるときに、このアニメを見て励まされました”、“この歌を聴いて一緒に頑張ってきました”など声をかけていただけると、とてもうれしいです。生活のなかに私の声が届いているんだなと思うと、やっていて本当によかったと思います」とファンからの声が何よりの力となっている。
「私にとっては、監督が思い描いているものに近づくこと。そしてそれを超えていくことが目標です。それだけに、監督やスタッフさんから“任せてよかった”と言われたときが一番、よかったなと思います」と意欲をみなぎらせるが、悩みの時期もあったという。
そんなとき、支えとなったのがアニメ『PSYCHO-PASS サイコパス』で演じたキャラクター・常守朱だという。「『サイコパス』では、主人公の朱を演じていました。私は20代半ばで、“思い切り若手”というわけでもなく、かといって“先輩”というわけでもない。“どういうふうにいたらいいんだろう”と悩む時期でもありました」と自身の立場に戸惑いもあった時期だそう。「でも朱は、どんどん困難に立ち向かっていく女の子で、朱を演じていると、手を引っ張られているような感じがして。怖気付いたりしてはいけない、どんどん挑戦して行こう!と思えたんです。朱との出会いはとても大きなものでした」。
「年齢を重ねるごとに、色々な幅の役をいただけるようになりました。本当にありがたいです」と感謝し、「どんどん声優というお仕事が楽しくなっています」と目を輝かせる花澤。「今でも“もっとこうできるかな”“もっと変わりたい”など色々なことを考えています。できないこともたくさんあります。だからこそチャレンジしたいし、楽しいんだと思います」。まっすぐに前を見つめる姿が清々しく、たくましく感じた。【撮影/野崎航正 取材・文/成田おり枝】