柔和な微笑みの堺雅人の真骨頂は心ゆさぶる“泣き笑い”

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柔和な微笑みの堺雅人の真骨頂は心ゆさぶる“泣き笑い”

人気作家・伊坂幸太郎の小説を映画化した『ゴールデンスランバー』(1月30日公開)で、首相暗殺犯にされる主人公・青柳を熱演した堺雅人。柔和なほほ笑みで人気の堺だが、本作では満面の笑みで感涙する“泣き笑い”で、観客の心をわしづかみにする。

本作で堺が扮する青柳は、平々凡々な宅配便のドライバーだ。ところがある日、幼なじみ (吉岡秀隆)からいきなり呼び出され「おまえ、オズワルドにされるぞ!」と言われる。このオズワルドとは、ジョン・F・ケネディ大統領暗殺の実行犯とされる人物のことで、文字どおり彼も、首相暗殺の容疑者として事件に巻き込まれていく。

監督の中村義洋が伊坂幸太郎作品を映像化するのは、『アヒルと鴨のコインロッカー』(03)、『フィッシュストーリー』(09)に続いて3本目。堺は、中村監督と『ジャージの二人』(08)、『ジェネラル・ルージュの凱旋』(09)で組んできたが、今回の青柳役は、『ジャージの二人』で演じたようなゆるめのキャラで、「助けてあげたい」と観客側の同情心をかきたてる。

そんな青柳だから、窮地に追い込まれた時にも誰かの加勢が入り、中盤ですでに彼の涙のせきが決壊するのだ。それは堺ならではの感情のこもった“泣き笑い”で、観る者も思わず涙腺を刺激され、ますます彼を応援したくなる。

本作では、伊坂幸太郎の緻密な構成力にうならされるが、それを見事に映像化した中村監督×堺雅人のタッグも秀逸! 劇場で観るに値する秀作だ。【Movie Walker/山崎伸子】

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