『アングリースクワッド』上田慎一郎監督と『侍タイムスリッパー』安田淳一監督、ミニシアターへの思いを吐露「人と人を繋ぐ場所」「恩義を感じている」
『カメラを止めるな!』(17)の上田慎一郎監督による最新作『アングリースクワッド 公務員と7人の詐欺師』(公開中)のスペシャルトークイベントが11月27日にアップリンク吉祥寺で開催され、上田監督と『侍タイムスリッパー』(公開中)の安田淳一監督が登壇。お互いの作品について語り合った。
共にミニシアターを出発点とし、映画界に旋風を巻き起こしたという共通項を持つ2人。それだけにミニシアターへの思い入れもひとしおで、安田監督が「ミニシアターとは、自分の映画が劇場にかかるきっかけを与えてくれた場所。恩義を感じています」と感謝すれば、上田監督も「ミニシアターがなかったら今の自分はない。作り手とお客さんが何度も出会える場所であり、人と人を繋ぐ場所だと思う」となくてはならない居場所だと述べていた。
都内1館から始まり、全国230館に拡大公開となる大ヒットを記録中の『侍タイムスリッパー』。その現象から、低予算のインディーズ映画ながら2018年に興収30億円超を記録した上田監督の“『カメラを止めるな!』の再来”と呼ばれている。先に発表された、第29回「新藤兼人賞」(日本映画製作者協会に所属する現役プロデューサーが選ぶ、将来性のある新人監督に贈られる映画賞)では、安田監督が銀賞を受賞。客席から祝福の声が上がると、安田監督は「草葉の陰で新藤さん怒ってへんかな?」と恐縮しきり。上田監督も「僕は新藤兼人賞を獲っていないので安田監督が一歩リード!」と快挙を讃えていた。
そんな安田監督は『アングリースクワッド 公務員と7人の詐欺師』について「上田監督は人を驚かして欺いて意表を突いてくる。どんでん返しするような今回の作品も上田監督に合っていて、ワクワクドキドキしながら拝見しました」と絶賛。ヒットにも喜んでおり「上田監督は絶対にコケてほしくない人。面白い作品が広がる過程を体感できて嬉しい」と労った。
上田監督は、「カメ止め」公開前から動いていたという渾身のプロジェクトである今回の自作について「大どんでん返しや奇をてらうのではなくて、王道のエンタメを作って成功したと思う。ジャンルからはみ出さないその中で観客を驚かせようとした」と狙いを明かし「その点では『侍タイ』と通じるところがあると思う」と話した。
そんな上田監督は『侍タイムスリッパー』を劇場公開2日目に鑑賞したという。「笑いと拍手が自然発生的に起きて、映画館で映画を観る喜びを体感できる映画だと思った」と感動。『アングリースクワッド』の宣伝活動に向けて身が引き締まったそうで「この時期に並走出来て良かった」と、「侍タイ」旋風に刺激を受けたと言うと、安田監督は「ならば今のヒットは僕のお陰かな?」とジョークを飛ばして豪快に笑っていた。
改めて安田監督は「侍タイ」旋風に触れて「劇場のお客さんの応援とシネコンがピックアップしてくれた心意気があって『カメ止め』を再現することが出来ている」と分析し「『カメ止め』や『侍タイ』のような広がりを望むインディペンデントの人には、自信を持って歩んでもらいたい」と後進にエール。これに上田監督も「大手配給がインディーズ作品をシネコンでかけてみようとする気持ちも高まるはず」と期待すると、安田監督は「そのドアを最初に開けたのは上田監督です!」と最後まで上田監督をリスペクトしていた。
取材・文/石井隼人
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