屋比久知奈が明かす“わたしはモアナ”の歌唱の秘訣「練習と気合いで乗り越えました。最終的には己との戦い!」
「楽曲にも背中を押してもらえる感じがすごくあって、助けられた気がしています」
進化を遂げたモアナを象徴する楽曲「ビヨンド ~越えてゆこう~」の歌唱には苦労したという。「楽曲としてもすごく繊細。特に前半部分はとても繊細で、音の動きも含めての難しさを感じました。オリジナルの表現に寄り添いつつ日本語で表現するというのもやっぱり難しくて。キーも高かったし、繊細なところから最後に向かってどう盛り上げていくのか、楽曲から発せられるエネルギーをどう持っていくかという流れもスタミナ的なことも含めて大変でした。すごく気合を入れて練習して挑んだ楽曲です」とかなり力が入っていたようだ。
“海の果てさえも、越えてゆこう”という歌詞のように、難しさを感じた楽曲の壁も乗り越えた。「練習と気合いで乗り越えました(笑)。結構高く見える壁を乗り越えるコツって、私の性格的にも最後は気合いだったりするんじゃないかなと思っています。もちろん、努力して練習もするし、いまできるすべてをという気持ちで準備はしましたけど、最終的には気持ちが大事だったんじゃないかな。逆にそこにすごく力があるとも思うし、そういう力はこれまでの舞台をやっていても感じてきたし、今回の『モアナ』でも感じています」とニッコリ。「最終的には己との戦い!」と笑い飛ばし、「何事もそうですけど、自分自身が一番邪魔をすることも、一番背中を押すこともできる。そういった意味では、“わたしはモアナ”というフレーズが入っていることで、楽曲にも背中を押してもらえる感じがすごくあって。そのフレーズを歌っていると自然と気合いが入るし、エネルギーをもらって最後のフレーズに持っていくことができる。今回も楽曲にたくさん助けられた気がしています」。
「周りとの絆やつながりがモアナの力になって、より強くいられます」
モアナが心から愛する3歳の妹シメアの存在も、モアナに自信を与えているように感じられるとし、「シメアと話している時のモアナがすごくお姉ちゃん。心が温かくなるシーンでした」と目を細める。と同時に、いつも頼られる存在であるモアナの新たな一面も見えたそうで、「『私がなんとかしなきゃ!』と自分が責任を持ってやる、やらなきゃいけないって思っている一面が強くなっているような気がしました。誰かに力を借りるのが多分、そんなに上手じゃないのかなとも思ったけれど、そこは、今回一緒に旅をしてくれる新しい仲間たちに救われます。私自身、演じていてすごく救われました。前作とは違う形で成長していくモアナの姿を観ることができたのはうれしかったし、私自身が元気をもらえました。それは前作と変わらなかったことでもあります。周りとの絆やつながりがモアナの力になって、より強くいられる。すごく共感できたし、観てくださる方にも勇気や元気、希望のようなエネルギーを感じてもらえるポイントになっていると思います」と成長したモアナを通して感じられる本作の見どころを挙げた。
海と特別な絆で結ばれ、海に愛されているモアナ。『モアナと伝説の海』という作品には屋比久自身も特別な絆を感じていることは言うまでもない。「東京に出てきて“屋比久知奈”として活動していくにあたっての1作目。デビュー作ということだけでも特別なことだけど、作品のテーマやモアナというキャラクター自身にすごく共感できて、身近にも感じられました。沖縄を出て東京に来たタイミング、作品に関わったことで私自身が1つ強くなれた、支えてもらったというのが当時感じていたこと。いま、改めて振り返ると、作品もモアナも自分のなかにずっといて、それが力となり自信にも勇気にもなっていたし、すごく背中を押してもらっていたと改めて実感しています」としみじみ。
ふとした時にモアナの姿やセリフ、楽曲も思いだすそうで、「常に共にしてきた私のコアとなっている存在。そんなすてきな存在に最初に出会えたことは、本当にありがたいし、幸せなことなんだろうって思います」とモアナと共に過ごしたデビューからこれまでの歩みを振り返り、そっと目頭を押さえる場面も。「今後もずっと変わらず、ずっとずっとモアナは自分のなかにいる気がします。モアナに似ていると言われることも多いし、でも、似てないところも含めてモアナが私を引っ張ってくれる気もしています。ずっと大事にしていきたいキャラクターであり、作品です。本当にかけがえのない出会いになりました」と自信に満ちあふれたまっすぐな目で語った。
取材・文/タナカシノブ