阿部寛、キャリア初の役柄を演じた『ショウタイムセブン』で決意を新たに「70歳になっても挑戦し続けたい」
「アドレナリンが出るのは、昔やった役ではないんですよね…」
一筋縄ではいかない折本を演じることに興味を持ったのは、難しい役だと感じたから。「キャスター役はすごく難しそうで自分にはできない役だと、これまで特に大きな理由もなく避けてきたように思います。だけどそろそろ拍車をかけて、無理だと思う役にも挑戦したほうがいいのかなと考えるようになった」と新しい役に挑戦した経緯を説明。「30年以上年役者をやってきていよいよ後半の時期に入っている。いろいろな役に挑戦してきたから演じたことのない役柄というのは、避けてきたものや自分にとってハードルの高いもの」と苦笑い。「アドレナリンが出るのは、昔やった役ではないんですよね…」としみじみし、「そうやって探していった結果が、キャスター役に惹かれた理由かもしれません」。
折本には正義感もあれば、事件を利用して「復帰したい」という目論見もある。腹黒さと正義感の両方を持つ、表裏一体のキャラクターだ。「事件を利用しようとする彼の内面は、演じていて一番おもしろかったし、一番好きなところ。その一方で、実は正義感もある。ポリシーを持って生きてきたということだし、野望が出るところはすごく好きです」と折本というキャラクターに惹かれるポイントに触れる。「僕も20代の時にはモデルとして人気が出て、役者の世界に飛び込み、調子に乗って家を買うみたいな、若気の至りを絵に描いたようなこともしてしまって(笑)。その後、世の中そんなに甘くないことも知った時に、もう一度ここから立ち直そうとエネルギーが湧き上がった経験をしています。野心に満ち溢れたエネルギーが出る瞬間は、正直、人生で一番楽しかった。がむしゃらに、頭を下げてでもなんでもいいからやっていこうって時に出るアドレナリンが好きでした。折本にもすごく惹かれるところがありました」と自身の経験を重ねて、正直な気持ちを打ち明け、「共感できます」とも補足した。
映画全体に流れる緊迫感、緊張感を高めたのは、事件が起きている現場とその様子が流れる番組を観ている視聴者に同じ時間が流れること、つまりリアルタイムであることが大きな意味を持つ。そしてもう一つ、重要な要素となったのは撮影現場に“本物”の番組制作スタッフがいたことだった。「カメラマンさん、ディレクターさん、タイムキーパーさんもすべてエキストラだと思っていました。どうしてこんな動きができるのかと感心していたんです。撮影が始まって3日目くらいに、みなさんが本物だと知って(笑)。監督から明かされるまで気づきませんでした。『今日は天気がよくてよかったですね』なんて雑談が上手なスタッフさんがいて。緊張感のあるシーンの撮影で僕に気を遣って話しかけてくれているのかなと思っていたら、実はディレクター志望の方でした。だからすごく自然だったのか!と本当にびっくりしました。現場の動きって独特だから、演出するのはすごく大変。監督はかなり助かったと思います」と阿部自身も驚きだった撮影エピソードを披露した。