阿部寛、キャリア初の役柄を演じた『ショウタイムセブン』で決意を新たに「70歳になっても挑戦し続けたい」

阿部寛、キャリア初の役柄を演じた『ショウタイムセブン』で決意を新たに「70歳になっても挑戦し続けたい」

「『こんなこともやっちゃうのか』って思われるようなことに挑戦し続けたい」

逃げ場のない生放送中のスタジオで、極限状態に追い詰められるが…
逃げ場のない生放送中のスタジオで、極限状態に追い詰められるが…[c]2025『ショウタイムセブン』製作委員会

折本は緊張感が漂うなかで選択を迫られるが、阿部自身にはなにかを選択する際の基準はあるのだろうか。「昔からわりと熟考するタイプ。若いころに決断が早すぎて大失敗した経験があるから、石橋を叩いてわたるようにしています。例えば仕事を請ける時に、明らかにおもしろそうなものは即、快諾することも多いけれど、そうじゃないものに関しては少し詳細が見えるまで返事はしないようにしています。僕の場合の話だけど、決断が早くてあまりいいことはなかったから(笑)、過去の経験も踏まえて、少し考える時間を作るようにしています」とそういった苦い経験から学んだことがいまの自分の考え方を作りだしたと、包み隠さず語る。

また、インパクトのある折本のセリフ「興奮した!」のように、自身のキャリアで興奮した、アドレナリンが出るのを感じた瞬間は「数々ある!」と充実感を滲ませ笑顔を見せた阿部。なかでもはっきりと明確に“興奮”を感じ取ったのは、「日本アカデミー賞を獲った時かな。ほかの方が受賞した時はコケたほうが盛り上がるよなとか、くだらないことを考えていたら、自分が呼ばれて、本当に予想外だったんだなあと自分でも後からあの時のことを思うけど、意外だったからうれしかった。やっぱり興奮した瞬間と訊かれたらあの時になるかな」と教えてくれた。

緊迫した場面が続き、観るものを引き込んでいく
緊迫した場面が続き、観るものを引き込んでいく[c]2025『ショウタイムセブン』製作委員会

本作はメディアのあり方を問う作品にもなっている。最後の折本のセリフにも問いかけが入っていると指摘した阿部は「フェイクニュースが次々と飛びだし、リアルに力を持ち始めてしまったりもする。テレビの情報よりもネットが力を持っていたりもする。そういう世の中だからこそ、キャスターというのか、報道の世界にこれからも存在し続けてもらいたいとも思いました」とし、「情報が勝手に出ていく世の中を、なんとかしていかなきゃならない。どんどん進んでいき、抜け道が多くなる状況はちょっと心配です」と役を通して考えた報道のあり方にもコメント。

自身のメディアとの向き合い方について「SNSはほとんど見ないし、意識しないです」とのこと。ただ以前はネットの世界での“本音”を参考にすることもあったそう。「20年くらい前は、『2ちゃんねる』を見るようにしていました。実は作品への“本音”が回収できる場所でもあったんですよね。すごく正直な意見が多いから、ドラマ初回放送後に感想をチェックして、それ以降の話数の参考にすることもあったりして。『こういう観点もあるのか』と前向きに捉えることもできたし、便利なツールだと思っていました。プロ並みに知識が豊富な人も本当に多いし、深掘りもすごく参考になっていました(笑)」と、意外な使い方を明かす。時代もツールも変化した現在は「あまりにも見るべき量が多いから見なくなったというのが正直なところ。量がありすぎて手が出せないんです」と率直な気持ちを吐露した。

阿部寛が自身のメディアとの向き合い方を明かす
阿部寛が自身のメディアとの向き合い方を明かす撮影/興梠真帆

改めて、初のキャスター役への挑戦は「楽しかった」と満面の笑み。今後も「やったことがない役」には高いハードルと感じても挑み続け、超えていきたいモチベーションを持ち続けるとキッパリ宣言した。「動けるうちにやっておきたい役はちゃんとやっておきたいです。日本は年齢を重ねると現場での体力などを心配されるのか仕事が減っていくという現実があります。カッコよく歳を重ね、すてきに年を取っている方もたくさんいるのに、なぜか作品の話が回ってこない。海外ではアンソニー・ホプキンスや、ジャック・ニコルソンのように年齢を重ねてもバーンと主演を張っているし、彼らが出るならと映画館へ観に行く人もたくさんいる。でも日本はちょっと違うんですよね。だから僕はそういうのをぶっ飛ばしていきたい!」と力を込める。「70歳くらいになって『こんなこともやっちゃうのか』『おっそろしいな』って思われるようなことに挑戦し続けたいなって。例えばだけど『75歳で宙吊りやってるよ、この人!』みたいな(笑)。まだ先の話だけど、そこに向けて頑張っていきたい気持ちは強く持っています」。


取材・文/タナカシノブ

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