“20代のトランプ”を演じたセバスチャン・スタンが語る!『アプレンティス』でのドナルド・トランプの演じ方

“20代のトランプ”を演じたセバスチャン・スタンが語る!『アプレンティス』でのドナルド・トランプの演じ方

成功を夢見る20代の青年が、ある出会いをきっかけに劇的な変化を遂げ、トップへと成り上がっていく。第45代アメリカ大統領ドナルド・トランプの青年時代を描く『アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方』(1月17日公開)で若き日のトランプを演じたセバスチャン・スタンは「本人に似ているように見せるよりも、彼の本質を捉えたかった」と、役づくりについて語りはじめる。

本作の舞台は1970年代。不動産業を営む父の会社が政府に訴えられ、破産寸前まで追い込まれていたトランプは、政財界の実力者が集まる高級クラブで、悪名高き弁護士ロイ・コーン(ジェレミー・ストロング)と出会う。勝つためには手段を選ばないコーンに気に入られ、勝つためのルールや服装から立ち居振る舞いまで教え込まれていくトランプは、やがていくつもの大事業を成功させていく。しかしそれを機にトランプは怪物へと変貌し、ロイとの師弟関係も歪みはじめることに。

マーベル・シネマティック・ユニバース作品でのバッキー・バーンズ/ウィンター・ソルジャー役で世界的人気を勝ち取ったスタン。過去には『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』(17)で主人公トーニャの夫ジェフ・ギルーリーを演じたり、『ダム・マネー ウォール街を狙え!』(23)では株式取引アプリの提供企業の創業者ブラッド・テネフを演じるなど、様々な“実在の人物”を演じてきた。

セバスチャン・スタンが繊細な青年から“モンスター”へ。トランプを全身全霊で演じ抜く
セバスチャン・スタンが繊細な青年から“モンスター”へ。トランプを全身全霊で演じ抜く[c]2024 APPRENTICE PRODUCTIONS ONTARIO INC. / PROFILE PRODUCTIONS 2 APS / TAILORED FILMS LTD. All Rights Reserved.

役づくりでは「基本的に動画や画像、インタビューなど、見つけられるあらゆるものを使ってコラージュを作り、そこから突き詰めていきます」と明かすスタン。今回トランプ役に挑むにあたっては、インターネットを通して1970年代から1980年代のトランプに関する資料を見つけ出して参考にしたという。「視覚資料だけでなく音声もありましたし、『トランプ自伝 アメリカを変える男』も読みました。すごくおもしろかったし、予想していたよりもはるかに楽しむことができました」と、充実感たっぷりに振り返る。

さらに「たとえばピアノを練習するときには、何度も何度も練習を重ね、自分の体の一部のように感じるまで繰り返し練習をしていきます。トランプの外見や話し方を作る上で、それと同じようなアプローチを取りました」と語り、ルックス面では特殊メイクも使ったことを告白。「でも僕としては、できるだけ特殊メイクを少なくしたかった」と、2か月をかけて体重を増量し“本物”に近付いていったのだとか。

高級クラブで弁護士ロイ・コーンと出会い、トランプは洗練された人物となっていくのだが…
高級クラブで弁護士ロイ・コーンと出会い、トランプは洗練された人物となっていくのだが…[c]2024 APPRENTICE PRODUCTIONS ONTARIO INC. / PROFILE PRODUCTIONS 2 APS / TAILORED FILMS LTD. All Rights Reserved.

そんなスタンが「最高のスパーリングのパートナーのような存在だった」と語るのは、劇中でトランプを導くロイ・コーンを演じたジェームズ・ストロングだ。コーンの劇的な生涯は、これまでも様々な映像作品で描かれてきており、過去にはジェームズ・ウッズやアル・パチーノといった名優たちがコーンを演じてきた。それでもスタンは「ジェレミーのようにコーンを演じられる人は、これまでにもいなかったし、これからもいないでしょう。僕たちは2人とも、自分の160%の力を注ぎ込めたと思っています」と自信たっぷりに語る。

「初めて顔を合わせたときから、僕たちの本作に対する姿勢が似ていると感じました。そこからはお互いに刺激を与え合い、まるで一緒に舞っているような感覚で、毎日が驚きの連続でした」と撮影現場を回想。「前半のシーンの多くを最初に撮影したことで、トランプとコーンの関係の基盤を築くことができた。だから後半は、それに基づいて自然な展開を作りだすことができたし、ある時点から2人の関係に起こった変化に僕ら自身も気付くことができました」と、物語の要となるトランプとコーンの力関係の変化のリアリティに太鼓判をおした。

【写真を見る】トランプ本人が上映を阻止!?いかにして“ドナルド・トランプ”が作られたのか、その禁断の過去が明かされる
【写真を見る】トランプ本人が上映を阻止!?いかにして“ドナルド・トランプ”が作られたのか、その禁断の過去が明かされる[c]2024 APPRENTICE PRODUCTIONS ONTARIO INC. / PROFILE PRODUCTIONS 2 APS / TAILORED FILMS LTD. All Rights Reserved.

昨年のカンヌ国際映画祭のコンペティション部門でお披露目されるや高評価を得たものの、トランプ側が公開阻止に乗りだし、なかなか北米での配給会社が見つからなかったことも話題を集めた本作。結局、昨年10月に本作は北米公開を迎え、その直後に行われたアメリカ大統領選で再選を果たしたトランプは、現地時間1月20日(月)に第47代アメリカ大統領として返り咲きを果たす。


最後にスタンは、本作を“観るべき理由”としてこう語る。「いまの時代の人々は、答えを求めていると思う。どう考えるべきで、なにをするべきか、教えてもらいたいと思っている人が多い。僕たちはまず、柔軟な考え方をして、より上手く人とコミュニケーションを取るように人々を励ますべきだ。そして、この映画を観た人の話を聞くだけでなく、自分自身で観ることも大事。自ら体験してみれば、この映画に感動を覚えてくれると信じています」。

構成・文/久保田 和馬

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