安田現象が映画『メイクアガール』に込めた願い「夢との向き合い方についての問いかけをしたかった」
「チームでやることの醍醐味を知った気がします」
自身が率いる「安田現象スタジオ by Xenotoon」はアニメーター4人、モデラー3人の少数精鋭チーム。本作の制作を経て「スタッフ全員が違う形で成長していったことがうれしかった」と笑顔を見せる。「決められたところを期日までに完成させることをやり続けることで、半年くらい経ったころから1人ずつ個性が伸び始めていきました。基礎的な作り方のプロセスをちゃんと踏んだからこそ、プラスアルファの表現の領域までできるようになってくれたことが本当にうれしくて。我々の体制では作品を作りながら“作り方”も模索していきます。そうしないと短期間でプロジェクトを回すことはできません。『メイクアガール』を完成させたことで、自分も含めて全員が以前とは比べ物にならないくらいの表現力で描けるようになったと自負しています」と充実感を滲ませる。これこそがチームで作るおもしろさだと気付かされたそうで、「1人だと研究する時間もないし、表現を丁寧に積み重ねるのも時間的に不可能。チームでやることの醍醐味を知った気がします」としみじみ。作品を通して「既存作品から受け取るアンテナも発達して、かっこいい、かわいい絵である理由を言語化することができるようになりました。それをレファレンスに落とし込む力が身についた印象があります。みんなすごく絵がうまくなったのも収穫でした!」とチームの成長、変化へのよろこびを噛み締めた。
また、「たどり着いた先がアニメーション作家だった」と自身の歩みにも触れる。「アニメーション作家になろうと思っていたわけではなく、元々はラノベ作家を目指していました。最初になまじ選考がいいところまでいったのがまずかったのかな。ある種、呪いのようになりまして(笑)。数年間泣かず飛ばず、さらにはニート期間もあり、メンタル的にいい加減疲れてきたなって時期に、食い扶持のために3Dのアニメーター業を始めて。気づけば中堅になってきたころに、今度は楽しむための創作をしたいと思うようになりました。なにかになりたいとか下心ばかりの創作をしてきた自分が『ちゃんと楽しむために創作したい!』と思って作ったのがショートアニメ『メイクラブ』でした」と順を追って説明。「ラノベを書いている時には審査員の人にしか(作品を)見られないような世界だったので、人に観られて作品が完成することを痛感しました」と、人に観られることのよろこび、ある種の達成感も覚えた。
「誰の目に触れるのかもわからないところで頑張るよりも、もしかしたら1円にもならないかもしれないけれど、観てくれる人がたくさんいる場所で作品作りを楽しみたいと思って始めたら、ありがたいことにお仕事をいただけるようになって。結果的にアニメーション作家になっていたという感じです」と笑みを浮かべるも、「言い方を悪くすれば、逃げたかったんです(笑)。ただ、逃げた先ではこれまで敗れた夢をちゃんと掛け算的に活かすことができたというのでしょうか。いまでは観てもらうことによろこびを感じる、ある種の中毒性を味わっているような状態です(笑)。とにかく観てもらいたい。どんな反応でも受け入れられるような強靭なハートを持つように心がけています!」と作品を観てもらうことへの心構えを語った。