『満ち足りた家族』ホ・ジノ監督が投げかけたテーマと、チャン・ドンゴンが悩み演じた“大人としての親の姿”とは

「私が幼い頃に大人気スターだったキム・ヒエさんと夫婦を演じるなんて、すばらしくて新鮮でした」(チャン・ドンゴン)

――共演者の方とのエピソードも教えていただきたいです。特にソル・ギョングさんはチャン・ドンゴンさんについて「存在自体がファンタジックなイメージだったが、今回のように地に足の付いた役柄もとてもすばらしかった」とお話されていました。

チャン・ドンゴン「ソル・ギョングさんとは共演経験こそなかったですが、長い付き合いで大好きな兄さんでした。今回初めて一緒に仕事をして、ソル・ギョングという俳優がどうやって大俳優になったのかが本当によく分かりました。キム・ヒエさんは、私が幼い頃にすでに大人気スターでしたが、そんな方と夫婦を演じるなんて(笑)。それがすばらしくて新鮮でした。驚いたのは、今回の撮影現場で一番のベテランなのに、新人のような態度で臨まれていたんですよね。誰よりも一生懸命でエネルギッシュなんです。情熱的な姿にすごく影響を受けました。クローディア・キムさんは韓国映画でのキャリア自体そこまで長くはないですが、ハリウッドで世界的スターと共演というもっと大きな経験があって、実力のある方なんです。当初はキム・ヒエさんのようなベテラン俳優に対抗できる女優が韓国にどれだけいるだろうと心配したんですが、ファーストシーンを撮った後、クローディア・キムさんが『できた』って言っていて(笑)。芯の強い俳優だと感じました」

――『満ち足りた家族』は多様で深い問題提起をしている作品です。そして子どもに対して親や大人がどうあるべきかを考えさせる映画だと思いました。お2人は、子どもを導く大人や親の理想はどのような姿だと思いますか。

ホ・ジノ監督「(しばし悩み、苦笑いしつつ)難しい…」

チャン・ドンゴン「難しいですね(苦笑)」

――すみません(苦笑)。ただ私は、映画のなかに理想のヒントとなるような人物が描かれていると感じました。

ホ・ジノ監督「たしかにそうですね。どうすれば子どもたちが幸せで、正しい道を生きていけるかのかどうか、そのために大人がどんな姿勢を見せるべきかは本当に悩ましいですよ。子どもたちの教育というのは社会的な問題と非常に深くつながっているんじゃないでしょうか…(チャン・ドンゴンを見ながら)どうすればいいでしょうかね？(苦笑)」

チャン・ドンゴン「私もうまく教育できていないということだと思います(苦笑)。ただ私が思うにこの映画のなかの登場人物って、理解できる部分があるじゃないですか。だから私たちが普通に生きていくうえで誰もが持ち合わせている性質を4つに分けて描かれている感じがしたんです。自分の子どもは中学校2年生の息子と小学校4年生の娘なんですが、子どもたちが生まれたばかりの頃、子どもたちのためにどんなお父さんであるべきか悩んでいたんです。そこでじっくり自分のことを考えてみたんですが、私が我が子と同い年の時の友達の名前や、先生がどんな人だったのか、その時どんなことがあったのか、私が何をしてお母さんやお父さんに怒られたのか、あるいは褒められたのか。全てその時の気持ちと一緒にちゃんと覚えているんですよ。でもその時、私の感情に影響を与えていたのは、親から直接言われたこととかではなくて。友達と喧嘩したり、自ら何かを見たり経験したりしながら成長してきたと思います。だから私ができることは、直接言ったり手を出したりするよりは、子どもたちが本当に間違えた時にもう一度正しい道を行けるようにする。そして子どもたちが一番上手く楽しくできることを一緒に探してやるのが、親の役割なんじゃないでしょうか」

なお、『満ち足りた家族』は”au推しトク映画”にラインナップされている一本。「Pontaパス」会員特典として、全国の対象映画館でおトクに楽しむことができる。全国のTOHOシネマズ、ローソン・ユナイテッドシネマグループ、コロナシネマワールド、OSシネマズなどの対象劇場で、土日平日いつでも1,100円で鑑賞可能。 Pontaパス会員、同伴者1名まで特典が利用できるので、利用方法はクーポンサイトを参照のうえ、映画館で楽しんでほしい。

取材・文／荒井 南