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人とふれあう温かさとせつなさを味わい深く描く『サンセット・サンライズ』。菅田将暉×岸善幸監督×宮藤官九郎にインタビュー

インタビュー

人とふれあう温かさとせつなさを味わい深く描く『サンセット・サンライズ』。菅田将暉×岸善幸監督×宮藤官九郎にインタビュー

楡周平の同名小説を、『正欲』(23)の岸善幸監督と宮藤官九郎の脚本により、ユーモアと人間味豊かなエンタテインメントに仕立てた『サンセット・サンライズ』(公開中)。コロナ禍により、よそ者への警戒心が強まっている東北の田舎町に飛び込んだ東京の若きサラリーマンと、町の人々との交流のドラマが描かれる。岸監督とは『あゝ、荒野』に続いて7年ぶりのタッグとなる菅田将暉が主演を務め、天真爛漫で人好きのする主人公を演じている。

主人公の晋作(菅田将暉)は釣りが大好きなサラリーマン。ネットで好条件の空き家物件を見つけた彼は、パンデミックによるリモートワーク化を幸いに、釣り三昧の日々を夢見て三陸沖に移住する。しかし、町のマドンナ的存在の百香(井上真央)の家のはなれに、よそ者が住み着いた噂はすぐに広まった。二週間の隔離期間でも釣りを我慢できない晋作は騒動を起こしつつも、町の人々と交流を重ねていく。そんなある日、彼は百香が貸してくれた、この家にまつわる悲しい過去を知ってしまう。

都会から移住してきた晋作(菅田将暉)は、隔離期間も我慢できず釣りに出かける日々
都会から移住してきた晋作(菅田将暉)は、隔離期間も我慢できず釣りに出かける日々[c]楡周平/講談社 [c]2024「サンセット・サンライズ」製作委員会

東日本大震災で甚大な被害を受け、今度はパンデミックに揺れる地方の町。そこに晋作という、都会から来た“異物”を放り込むことで人間ドラマが動き、人とのふれあいの温かさが笑いやせつなさとともに広がっていく。この味のある映画の舞台裏を、岸監督と宮藤官九郎、菅田将暉に聞いた。

「都会の人間と地方の人間が、少しずつ心を通わせていく様子がおもしろい」(宮藤)

【写真を見る】なかよく釣りポーズを決めてくれた菅田将暉、岸善幸監督、宮藤官九郎
【写真を見る】なかよく釣りポーズを決めてくれた菅田将暉、岸善幸監督、宮藤官九郎撮影/興梠真穂

――この映画は東北と東京、さらにいえば田舎と都会の人間のメンタリティの違いが興味深いですが、作り手の側としてどんなことを考えていたのですか?

宮藤「東京から来た晋作が、いかにイノセントにそこにいるか?なにも考えていないかのようにそこにいるのが、いいなあと思ったんですよね。僕は宮城出身ですが、東北の人間は警戒心が強く、つい邪推してしまうんです。東京の人に対して『バカにしてんでしょ!?』というような。しかもコロナのころは、物理的に東京とは分断されてましたからね。県境を越える移動は控えるようお達しがあり、ますます警戒する。そこに晋作がやってきて、最初は地元の人々も疑ってたけれど『コイツ、いいヤツかもしれない…』となっていくのがおもしろいですね」

岸「僕も山形出身なので、宮藤さんが書かれたこの脚本の意図がよくわかりました。東北の人は本音をなかなか言わないんですよね。そういう意味では、コミュニケーションについての映画でもあると思います。コミュニケーションは衝突を辞さないことがある。東北の人間にも本音を言うことはあるし、それを導き出していく晋作との関係性が絶妙だなと思いました。人と人が衝突しながらも向き合っていくことが、重要なテーマだったかもしれません」

「東北出身の方々が、内に秘めたものを表現するパワーってすごいですよね」(菅田)

 役所務めの百香(井上真央)は、突然東京からやってきた晋作に警戒
役所務めの百香(井上真央)は、突然東京からやってきた晋作に警戒[c]楡周平/講談社 [c]2024「サンセット・サンライズ」製作委員会

――菅田さんは大阪出身ですが、東北の人に対する見方は、また違ったものがあるのではないでしょうか?

菅田「この作品のあとに撮った作品も東北ロケがありました。岸さんや宮藤さんもそうですが、東北出身の方々には表現者が多いですよね。そのパワーを発揮するためのエンジンのかかり方が違うなと思いました。皆さん元気でエネルギッシュですが、それだけではなく内向的な部分もあり、その内に秘めたものが表現となって表れる。それは演じていて思ったし、いいなとも思いました」

 岸監督とは7年ぶりのタッグとなる菅田将暉
岸監督とは7年ぶりのタッグとなる菅田将暉撮影/興梠真穂

――岸さんと宮藤さんの“内向的なパワー”はどこからくるのでしょう?

宮藤「テレビの影響は少なからずあると思います。東北は東京よりも民放の数が少ないし、各県でネットしているものが違う」

岸「山形では『3年B組金八先生』は放映されてなかったですからね(苦笑)。子どもが当然見ているはずの番組体験も、欠落していることがあります」

宮藤「金八先生を観ていたかどうかは、人格形成に違いをあたえている気がしますね。上京して、そういう子どものころに当たり前に観ていたものを観ていなかったことを知って、卑屈になるんですよ(笑)」


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