圧巻の一揆に作りこまれた街並み、アクションの製作秘話も明らかに!『室町無頼』VFXメイキング特別映像
混沌を極める室町時代を舞台に、乱れた世を正すべくアウトローたちが巨大権力に戦いを挑む『室町無頼』(公開中)。本作のVFXに迫った映像が解禁となった。
時は室町、“応仁の乱”前夜の京。大飢饉と疫病の連鎖し、路上には無数の死骸が重なっている。そんな混沌の世の中に風の如く現れ、巨大な権力に戦いを挑んだ者たちがいた。蓮田兵衛(大泉洋)は、日本史上、初めて武士階級として一揆を起こし、歴史にただ一度だけその名を留める男。本作では、彼の元に結集した”アウトロー=無頼”たちの知られざる闘いをドラマチックに描いていく。
公開以降、SNSでは「息をのむ瞬間が次から次にやってきて目が離せない」や「格好良すぎて興奮が止まらない」、「まだまだ時代劇も捨てたもんじゃない!」など熱い感想コメントが駆け巡っている。ダイナミックなアクションシーンだけではなく、観る者の心動かす物語にも絶賛の声が多く聞かれ、『侍タイムスリッパー』(23)、「SHOGUN 将軍」など時代劇ブームが沸き起こっているいま、新時代の時代劇アクション・エンターテインメントとして日本中を席巻している。
そんな本作より、誰も見たことのない室町時代を描き、大迫力の一揆やアクションシーンの舞台裏に迫った貴重なVFXメイキング特別映像が公開に。SNSでも大きな話題となっている室町時代の作りこまれた世界観や、一揆の迫力がVFX技術を通してどのように作られたのか、そして長尾謙杜演じる棒術の達人、才蔵の圧巻の1カットアクションがボリュメトリックビデオによってどのように生まれたのか分かる映像となっている。
一揆の迫力ある描写は本物の松明を使用したり、実際に人を集めてなるべくリアルな状況で撮影しつつも、VFXでその迫力を増すように補完されている。1カットアクションは、まずグリーンバックでの芝居をデジタルデータでキャプチャし、撮影方法を検証。美術チームが必要な足場を制作したり、逆に不要な部分を削ったりなどして調整するなか、アクションチームはシミュレーションを元に殺陣を組み立て、キャストは毎日のように練習に取り組み、入念にカメラテストをした後に本番に臨んだという。VFX技術をもとにまさに現場が一丸となって作り上げた。
VFXスーパーバイザーの野口光一は、「VFXに丸投げではなく、各チームと相談ができる現場で設計していったことで、世界観がうまくいった」と語っている。また、300人ものエキストラが集う二条大通りの戦いのシーンは当初、時間や天候の制約がないスタジオの中での撮影が計画されていたが、ハリウッドとは異なり高さがあまりない日本のスタジオでは、照明が近くなることで自然光を表現することが不可能ということで、オープンセットで実施することになったという。ちょうど太秦の映画村の建て替えのため更地になる予定の場所があったことでこれが実現でき、奇跡のタイミングでもあったようだ。
本作の重要な要素である『用心棒』(61)や『マッドマックス』(79)のような荒廃した世界観については、大泉洋が「ジェットファンの音でセリフが聞こえない」というエピソードを各所で披露している通り、背景で常に煙が上がっていたり、木が揺れていたりするためCG合成には特段の苦労があった。しかし野口は、入江悠監督の思い描く世界観を作り上げるために「前面にどうだ!というエフェクトもあるが、本作ではバックグラウンドのVFX」を心掛けていたという。また、本作のVFXには神央薬品、NHKアート、白組、VOXELなど、多くのVFX制作会社が携わっている。
東映京都撮影所の職人たちの伝統とVFX技術が融合したことで完成した新しいアクション時代劇『室町無頼』。すでに鑑賞済みの人も映像に注力して観直せばさらなる発見が得られるかもしれない。
文/平尾嘉浩