アカデミー賞作品賞10本、今まで避けられてきたSF・娯楽作の行く末は?
2日(アメリカ現地時間)に、第82回アカデミー賞作品賞の候補として274作品の中から10作品が選ばれたが、早くもその行方が注目されている。
今年から作品賞のノミネートが5作品から10作品に増えた背景には、アカデミー賞授賞式の視聴率低下を食い止める狙いがあったと言われている。これは平易に言ってしまうと、これまでの作品賞は芸術志向のアート系作品が多かったので、一般人にも馴染みのあるSFや娯楽作品も枠に入るよう配慮されたものだ。
特に若者のアカデミー賞離れは顕著で、その理由には、興行成績や一般客の視点とはあまりにかけ離れた、アカデミー協会独特の視点が挙げられている。
毎年アカデミー賞の前になると、劇場にいる一般客に対して、「アカデミー賞にノミネートされた作品を見たか?」と質問している光景がニュースになるが、多くの人々、特にアフリカ系やヒスパニック系の人々は、「どれも見ていない」とか「知らない」と答えている。昨年はあの『ダーク・ナイト』(08)でさえも、作品賞にノミネートされておらず、これでは賞に興味が持てないのは当然。彼らにも親しみを持ってもらうには、やはり一般の視点を取り入れることも大事だと考えたようだ。
その結果は、どうだったのだろう? アカデミー協会が避けてきたと言われているSFやVFX(視覚効果)をふんだんに駆使した作品、そして娯楽映画の行方に注目が集っていたが、ちょっとグロめで予想外の大ヒットとなったSFアクション『第9地区』がノミネートされたほか、長編アニメ『カールじいさんの空飛ぶ家』が、“長編アニメーション作品賞”という別部門で選出された上に、初めて作品賞にノミネートされたのは今までとは変わった印象だ。
一方で『スター・トレック』、そして大ヒット・コメディー『ハングオーバー』などゴールデングローブ賞のコメディー・ミュージュカル部門でノミネートされていた5作品は玉砕で、「芸術作品の選択肢が広がっただけ」という見方も根強いようだ。
今回、作品賞の有力候補の一つと言われている『アバター』もVFX(視覚効果)をふんだんに使ったSF映画ではあるが、全世界歴代興行収入1位の記録を塗り替えただけではなく、3Dや映像などの技術面でも映画史に大きく貢献しており、別格の存在。仮に同作が受賞しても、本当にSF作品や娯楽作品が受け入れられたとは手放しに喜べない状態で、ノミネート数が拡大した本当の効果が表れるのは、来年以降のお楽しみになりそうだ。【NY在住/JUNKO】
■作品賞ノミネートは以下の通り
『アバター』『しあわせの隠れ場所』『第9地区』『17歳の肖像』『ハート・ロッカー』『イングロリアス・バスターズ』『プレシャス』『A Single Man』(原題)『カールじいさんの空飛ぶ家』『マイレージ、マイライフ』