スカッとした爽快感が気持ちいい!劇場版『トリリオンゲーム』など週末観るならこの3本!
MOVIE WALKER PRESSスタッフが、いま観てほしい映像作品3本を(独断と偏見で)紹介する連載企画「今週の☆☆☆」。今週は、目黒蓮&佐野勇斗が最強バディを演じる「トリリオンゲーム」の劇場版、ミュンヘンオリンピック事件をテレビクルーの視点で描くサスペンス、マッツ・ミケルセンがデンマーク開拓史の英雄を演じる歴史ドラマの、スリリングな3本。
ガクを大切に思うハルのまっすぐな行動に胸が熱くなる…劇場版『トリリオンゲーム』(公開中)
人気コミックの実写化ドラマとして、2023年夏に放送されて大きな話題を呼んだ「トリリオンゲーム」待望の劇場版がついに公開!目黒蓮、佐野勇斗、今田美桜、福本莉子をはじめ、豪華キャスト陣も再集結。原作の稲垣理一郎と作画の池上遼一が監修を担ったオリジナルストーリーとなる本作では、ハル(目黒)&ガク(佐野)の名コンビがIR事業に挑戦する。
あらゆる事業に挑んできたハルとガクのトリリオンゲーム社が今回乗り出す新事業は、日本初のカジノリゾート開発。現実世界でもカジノを含めた統合型リゾート施設の計画が進んでいるいま、カジノは映画ならではの壮大なスケール感にふさわしいと同時に、絶妙なリアリティを感じさせる題材でもある。臨場感あふれるカジノのセットの豪華絢爛さと、事業の裏側にあるさまざまな問題やリスクの描写との対比が鮮やかだ。駆け引きがスリリングなポーカーシーン、ハルと桐姫(今田)、ガクとリンリン(福本)のもどかしい関係、ハルの本格的なアクションなど見どころが満載のなか、やはり軸となるのは世界一のワガママ男、ハルと、気弱な凄腕エンジニア、ガクの揺るぎない友情。ガクを大切に思うハルのまっすぐな行動に胸が熱くなる。ギラギラしたビジネス界の話なのに、印象はスカッとした爽快感が気持ちいい青春ドラマ。早くも続編が気になるラストにも注目!(映画ライター・石塚圭子)
現代メディアの諸問題に直結する多くの示唆が盛り込まれている…『セプテンバー5』(公開中)
1972年9月5日、ドイツのミュンヘンで開催されていたオリンピック会場で発生した、過激派組織「黒い九月」によるイスラエル代表チーム襲撃事件。その悲惨な顛末は、スティーヴン・スピルバーグ監督の『ミュンヘン』(05)冒頭でも描かれたが、本作はこの状況を報道人の視点から描いた実録ドラマの力作だ。テロ事件の映画化といえば『ユナイテッド93』(06)を即座に思い出す人もいると思うが、視点の置き方は大きく異なる。
前代未聞のテロ事件中継に挑むことになるテレビマンたちのドラマは、とてつもない緊迫感と臨場感、そして疾走感に満ち溢れている。情報収集と素材確保に右往左往しながら、スクープを伝えるべく奔走し、時には人命にかかわる大失態をしでかしてしまう…その後の報道規制にも影響を与えたであろう衝撃的エピソードの数々は、マスコミ関係者でなくとも必見。そこには現代メディアの諸問題に直結する多くの示唆が盛り込まれている。当然、ラストシーンには苦い思いが待ち受けるが、上映時間わずか95分とは思えない見応えと充実感は間違いなく体感できるはずだ。
タバコの煙が充満する調整室でのやりとりは「プロフェッショナル 仕事の流儀」的なモノづくり群像劇の醍醐味に溢れ、当時の放送技術をディテール豊かに描いた部分も興味深い。実力派俳優陣のアンサンブルからも目が離せないが、なかでも八面六臂の活躍を見せる女性スタッフを演じたレオニー・ベネシュが鮮烈な印象を残す。当時のドイツにおける若い世代の苦悩と、男ばかりの職場で力量を発揮する女性のエンパワーメントを同時に体現する彼女の存在が、言わばこの映画の時代性と現代性をともに背負って立っている。(ライター・岡本敦史)
壮大なメロドラマとして大いに楽しめる…『愛を耕すひと』(公開中)
ハリウッドでは冷酷なヴィランが十八番のマッツ・ミケルセンだが、母国デンマークの作品では実に人間味溢れるキャラクターに扮する。18世紀デンマーク。退役軍人のルドヴィ大尉はたった一人で荒野の開拓に挑む。が、自然の脅威と有力者デ・シンケルの度重なる嫌がらせが悉く行手を阻む。貴族の称号が欲しい叩き上げの軍人、ルドヴィがマッツの役どころ。
貧しく無骨な彼をなぜかデ・シンケルの婚約者エレンが見初める。さらにデ・シンケルのもとから逃げた使用人の女性からも慕われ、行き場のない少女とともに束の間、家族のような関係に。ひたすら成功、地位、名誉を求めてきた、冷え切った男の心を揺るがす愛情。さすが「北欧の至宝」、少女も含め、女性側が放っておかない。ロマンを追う男の背中の哀愁の罪深さ。実直に開拓に勤しんでいるはずが、自然と周囲に渦巻く愛憎劇。原作は史実に基づいた歴史小説だそうだが、デンマーク史は知らなくても、壮大なメロドラマとして大いに楽しめる。(映画ライター・高山亜紀)
映画を観たいけれど、どの作品を選べばいいかわからない…という人は、ぜひこのレビューを参考にお気に入りの1本を見つけてみて。
構成/サンクレイオ翼