システィーナ礼拝堂を再現!英米アカデミー賞ダブルノミネートの『教皇選挙』美術の秘密に迫る
ローマ教皇を決める教皇選挙(=コンクラーベ)の内幕を描いたジャーナリスト兼作家ロバート・ハリスの原作を、『西部戦線異状なし』(Netflixにて配信中)のエドワード・ベルガー監督が映画化した『教皇選挙』(3月20日公開)。このたび本作から、多数の受賞歴を持つ気鋭のプロダクションデザイナーのスージー・デイヴィーズが手掛けた美術セットの秘密に迫る特別映像が解禁された。
レイフ・ファインズが主演を務め、スタンリー・トゥッチ、ジョン・リスゴー、そしてイザベラ・ロッセリーニらが共演した本作。ローマ教皇の死によってコンクラーベを執り仕切ることになったローレンス枢機卿(ファインズ)。世界各国から強力な候補者たちが集まり、極秘の投票が始まるなか、うごめく陰謀や差別、スキャンダルの数々にローレンスの苦悩は深まるばかり。そして新教皇誕生を前に、ある大事件が勃発する。
映像のなかでデイヴィーズは、ベルガー監督について「視覚的なセンスが抜群」と評価し、絵画と建築の知識が豊富だと明かす。さらに「作品全体を通して光と闇、男と女、伝統とモダンといった対照的なバランスがある」と解説し、「(枢機卿たちが宿舎として使用する)聖マルタの家と、(投票場所となる)システィーナ礼拝堂やバチカンの庭園には、少し自由なニュアンスを出しました」と振り返る。
そして本作の撮影でなにより驚くべきは、システィーナ礼拝堂を再現したセット。バチカンでの撮影は許可されないため、イタリアを代表する老舗映画スタジオであるローマのチネチッタ・スタジオで撮影を敢行。その倉庫には過去に作られたシスティーナ礼拝堂のレプリカが残されており、デイヴィーズら美術チームはそのセットの制作に携わった地元の職人たちを招き、10週間かけて再構築。映像のなかでは、その修復の一部も確認することができる。
デイヴィーズは本作で全米美術監督組合賞(現代映画部門)を受賞し、アメリカのアカデミー賞と英国アカデミー賞の美術賞にダブルノミネートを達成。『ターナー、光に愛を求めて』(14)以来10年ぶり2度目のダブルノミネートで、悲願のオスカーに輝くことができるのか注目だ。
文/久保田 和馬