震災との対峙、がんとの闘病を告白。“世界の坂本龍一”のプライベートが明らかに!
『ラストエンペラー』(87)で日本人初のアカデミー賞作曲賞を受賞したほか、数々の映画作曲賞を総なめにし“世界のサカモト”として知られるミュージシャン、坂本龍一。独創的な音楽性で多くの楽曲を生み出してきた彼に、2012年から5年間密着取材した初のドキュメンタリー『Ryuichi Sakamoto: CODA』が11月4日(土)に公開される。初公開のプライベート映像や坂本自身が本音を語るインタビューも含む貴重な記録は、驚きと感動にあふれる一編の詩のよう。
東日本大震災で被災した一台のピアノと坂本が出会う冒頭。続いて、坂本自ら防護服を着て福島第一原発を囲む帰還困難区域に足を踏み入れ、無人集落の残骸の音に触れる姿や、環境問題や平和問題への活動に携わる真摯な姿が映し出される。そして、2014年に中咽頭がんを患い、闘病生活を経て仕事に復帰する人間としての私的な経験までも捉えていく。
また仕事場でピアノに向かうなど、坂本の音づくりもカメラは捉える。9.11以降に始めたという音集めでは、北極圏で氷が解ける音を録ったり、雨の中でバケツをかぶってみたり…と、世界各地で“自然の音”を求める様子が確認できる。
70年代、イエロー・マジック・オーケストラ(YMO)での革新的なサウンドから、80年代に確立した映画音楽家としての世界的地位、90年代後半からの社会問題に意識を向けた音楽表現。彼の今までの変遷も、充実したアーカイブ素材や本人が語る過去のエピソードと共に振り返られる。
ここでは、坂本が「全てさらけ出した」と言うほど、彼の素顔が映し出される。静謐なカメラワークの中、各所に散りばめられるのは、本質を突いた言葉の数々。そこから感じられる坂本の人間性と、こだわり抜かれた音楽に胸を打たれずにはいられない。坂本龍一の音づくりを、深い世界観を、眼と耳で体感してほしい。【トライワークス】