『gifted/ギフテッド』マーク・ウェブ監督が天才子役との出会いと、あの大作映画への想いを明かす!
「アベンジャーズ」シリーズで“キャプテン・アメリカ”を演じ、ハリウッド屈指の人気スターの座を獲得したクリス・エヴァンス主演最新作『gifted/ギフテッド』。11月23日(木・祝)の公開に先駆けて、監督のマーク・ウェブが来日。世界中の観客の涙腺を刺激する名演技を見せた天才子役との出会いや、制作中止となった大作映画の裏話を語ってくれた。
本作は、先天的に高度な数学の才能(ギフテッド)を持った少女メアリーと、彼女を男手ひとつで育て上げる叔父のフランクとの絆を描き出した感動のヒューマンドラマ。普通の子供と同じように育ててほしいという、亡き姉の意志を継いでメアリーを育ててきたフランクの前に、彼女の才能を伸ばしたいと考えるフランクの母・イブリンが現れ、親権をめぐる家族間の裁判が幕を開けることになる。
「とにかく読んだあとに心がとても温かくなって、魅力的な作品だと思ったんだ」と、本作との出会いを振り返ったウェブ。「『アメイジング・スパイダーマン2』(14)の仕事を終えてくたびれていて、何かシンプルな作品をやりたいなと思っていたら、カレン(本作のプロデューサーであるカレン・ランダー)が、この脚本を送ってくれたんだ」と語る。
本作の注目は、何と言っても天才数学少女のメアリーを演じたマッケナ・グレイス。「彼女を見つけたとき、すごくホッとしたよ」と、思わずウェブが笑顔を見せるほど、わずか11歳にして豊かな表現力を持ち合わせた彼女は、今後も出演作が相次ぐ期待の大型新人。そんな彼女との出会いを、ウェブはこう振り返る。
「何百人もオーディションをして、それでもメアリー役に相応しい少女を見つけられなかったんだ。これでは映画を作れそうにないと、スタジオに電話しようと思ったときに、彼女を見つけたんだ」。第一印象ではすごく変わった子だと思ったウェブは、彼女にオーディションとして、劇中でメアリーが里親のもとに預けられるシーンを演じさせる。そのときの驚きのエピソードを明かした。
「彼女は少し時間をくださいと言って、部屋を出て行ってしまったんだ。だから、オーディションに立ち会っていたクリス(・エヴァンス)と2人で肩を落としたんだ。ところが、3分ほど経って戻ってきた彼女は、置いていかれる恐怖から、怒りから、裏切られたショックまで、ものすごい感情の爆発を見せてくれたんだ。その瞬間、もう彼女しかいないと思った」。そしてウェブは「彼女がいなければこの映画は作れなかった」と断言した。
数々の有名なMVを手掛け、長編映画デビュー作となった『(500)日のサマー』(09)で高い評価を獲得したウェブは、監督2作目で『アメイジング・スパイダーマン』(12)の監督に大抜擢された。さらに『アメイジング・スパイダーマン2』も手掛け、さらなる続編の話も上がっていた矢先、スパイダーマンの権利関係が変更され、続編制作が中止に。
3作目も引き続き監督する予定だったウェブは「キャラクターに思い入れがあるから寂しくもあったが、その分ほかの作品ができると思えたからトラウマにはなってないよ」とにっこりと微笑んだ。「スパイダーマンはマーベルのユニバースの中にいるべきだと思うから、僕が作っていたときから、どうやってその中に戻るのかと疑問に思っていたんだ」と、愛すべきスーパーヒーローへの想いを明かした。
『アメイジング・スパイダーマン2』では、原作発刊当時大きな話題となったヒロインの死を毅然と描き出した。「原作の通りグウェン・ステイシーを殺したかったんだ」と、長年愛され続けている作品へのリスペクトを見せたウェブは「でもエマ・ストーンなしで、3作目をどう作るべきか迷っていたんだ」と本音を漏らした。
「正直なところ、今回の『gifted/ギフテッド』を撮ろうと決めたときには、もう『アメイジング・スパイダーマン』を撮ることはないとわかっていたんだ。でも、仮に3作目をやっていたとしても、この映画は絶対に作っていたよ」と、これまで彼が手掛けてきた作品とは少し違ったテイストの、新たな挑戦ともいえる本作に、たしかな手応えが窺えた。【取材・文/久保田和馬】