「ガルパン」だけじゃない!13万人が訪れる「大洗あんこう祭」の魅力とは?
11月19日、アニメ「ガールズ&パンツァー」の舞台・茨城県大洗町で催された「第21回大洗あんこう祭」は晴天に恵まれ、約13万(主催者発表)もの人々が訪れた。“まるでフェス!?”と思わせる現地の盛況ぶりは、『ガールズ&パンツァー最終章 第1話』(12月9日公開)関連のトークイベントに登壇したキャスト&来場者の集合写真が物語っている。
それにしても「ガルパン」をご存じない方の中には、現地で何が催されているのかピンと来ない人もいるのでは?今回は「大洗あんこう祭」をステージ周りを中心に掘り下げ、大洗町と「ガルパン」がどう盛り上がっているのか?その一端をご紹介したい。
そもそも「大洗あんこう祭」とは?
1998年に始まった「大洗あんこう祭」では、第16回(2012年)より「ガルパン」関連イベントが催され来場者が急増。『ガールズ&パンツァー 劇場版』(15)のロングランヒットを経た昨年の第20回は過去最多の13万人が来場した。各メディアは「ガルパン」周りを注目して紹介しがちだが、祭りの肝は地元で堪能できる‟冬の味覚”アンコウだ。午前・午後の計2回、メイン会場の大洗マリンタワー前広場ステージで披露されるアンコウの吊るし切りは、アンコウが部位毎にどんどん捌かれるさまを解説付きで目の当たりにできる企画だ。アンコウはもちろん「あんこう汁」として安価で振る舞われ、観光客が整理券を求めて列を成す。
他にもステージでは友好都市のPR、郷土芸能披露、キャラクターショー(今回は映画がヒット中の「キラキラ☆プリキュアアラモード」ショー)、県立大洗高校マーチングバンド“BLUE-HAWKS”の生演奏なども催され、毎年好評を博している。特にBLUE-HAWKSは例年、顧問の先生のユーモラスなトークと「ガルパン」の楽曲も交えたドリル演奏に引き込まれる観光客も少なくない。
防災トーク、混雑緩和…あんこう祭に変化の兆し
今回のステージには少し‟変化”があった。トークイベントから生演奏に移る間、大洗大使&「ガルパン」応援大使のプロレスラー・蝶野正洋選手が、大洗と「ガルパン」の縁を繋いだ人物の一人、「大洗まいわい市場」の常盤佳心彦氏と、AED(自動体外式除細動器)や地域防災活動に関するトークを行ったのだ。常日頃、居住地域の防災活動を把握すること(自助と共助)の大切さ、日頃の公助の取り組み、大洗町は安心・安全をモットーに祭りを催していることなどを紹介。東日本大震災の被害から復興した大洗町だからこその説得力あるトークに、来場者もしっかり耳を傾けていた。
トーク終盤は雰囲気が変わり“黒のカリスマ”蝶野選手に心酔し、大洗を愛して止まないファンで結成された“大洗隊”が登壇。彼らがこれから大洗で何らかの展開を起こすのか?気になるところだ。また大洗隊と一緒に登場した「ガールズ&パンツァー」プロデューサー&大洗大使・杉山潔氏も、震災の経験や他地域の例を挙げ防災を啓発した。
2年連続で約13万人が訪れた「大洗あんこう祭」。だが昨年は交通渋滞や列車の混雑など、ファンの激増により思わぬ事態が相次ぎ、地元も改善策を熟慮。本年は臨時駐車場を拡充し、水戸から大洗への移動手段・鹿島臨海鉄道大洗鹿島線の車輛増結、「ガルパン」グッズの販売会場を移してスペースも広く確保するなど、各所のさまざまな努力で諸問題が確実に緩和されていた。
さらに会場や商店街で驚かされたのが仮設トイレの充実ぶり。洋式の設置、トイレットペーパーの安定供給、手洗い場も仮設するなど、食べて飲んで…という祭りに欠かせない施策を称賛する声もSNS上で見受けられた。
食べ歩き、痛車、AR、献血…訪れた人の数だけ楽しみ方がある。
メイン会場を離れ、TVシリーズ、劇場版でも戦車戦の舞台になった商店街へ足を運ぶ。当日は歩行者天国で車を気にせず、(コンテストで展示された“痛車”は気になりつつ…)散策する商店街は、お食事処はもちろん、海産物店や精肉店、酒店、とうふ店、菓子店、文具店、釣具店、農機具店(!?)などに地元グルメやお土産を求めて観光客が切れ間なく訪れていた。その雰囲気は、まるで柴又や秩父といった門前町の賑わいを彷彿させる。中にはスマホを片手に、GPSとARを連携させたアプリで舞台散策をゲーム感覚で楽しむ観光客も見受けられ、歩いて、食べて、写真を撮って、遊んで…と思い思いに街歩きを楽しむ姿が印象的である。
「大洗まいわい市場」「ガルパンギャラリー」などファンにも人気の店舗も入る施設「大洗シーサイドステーション」も買い物客の行列ができるほどの賑わい。隣接の駐車場には「ガルパン」とコラボキャンペーンを展開する日本赤十字社の献血バスも停まっており、時間を割いて献血して帰る観光客も。食べ歩きから献血まで、楽しみ方は多種多様。TVシリーズや、劇場版をきっかけに訪れて、気付いたら町そのものの魅力にハマっている…。大洗町には、そんな素敵なツーリズム・マジックが溢れていた。
初春には、大洗で生演奏付き映画上映も!
同日の「ガルパン」トークイベントに話を戻すが、イベントでの告知で最も興味深かったのは、来年3月18日(日)に大洗文化センターで“劇場版シネマティック・コンサート”が実施されるという発表だった。これは映画をフルオーケストラの生演奏と一緒に楽しむ試みで、17年は『美女と野獣』(17)『ゴジラ』(54)でも同様の企画が催され好評を博した。
「ガルパン」も劇場版で幾度か実施され、その模様や昨年の「大洗あんこう祭り」を収めたブルーレイ『ガールズ&パンツァー 劇場版 シネマティック・コンサート』が12月22日に発売される。発表で注目すべきは、そのコンサート実施日が「大洗あんこう祭」に次ぐ催し「大洗春祭り 海楽フェスタ」の開催予定日でもあり、こちらにも更なる観光客の来訪が見込まれ(17年は約8万人が来場)、大洗×「ガルパン」の楽しみが確実に増えたという点だ。祭りやコンサートはもちろん、当日の商店街周辺の盛り上がりを想像するだけでワクワクが止まらない。
年内も、大洗ではキャラクターの誕生日イベントの予定や、開館15周年を迎えた「アクアワールド大洗」と「ガルパン」とのトークイベントも12月24日(日)に開催される。地元が、作品が、ファンが、さまざまな形で楽しい時間を共有する大洗町。劇場上映される『ガールズ&パンツァー 最終章』は全6話。この展開は話数を重ねる毎に進化し続けるはず。共に楽しみ、見守らせてもらいたい。
取材・文/トライワークス