間宮祥太朗と小林勇貴監督が語る、衝撃作『全員死刑』の舞台裏|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
間宮祥太朗と小林勇貴監督が語る、衝撃作『全員死刑』の舞台裏

インタビュー

間宮祥太朗と小林勇貴監督が語る、衝撃作『全員死刑』の舞台裏

間宮祥太朗が面白い。2017年に出演した映画は、人気コミックの映画化『帝一の國』、群馬のご当地映画『劇場版 お前はまだグンマを知らない』、青春スポ根映画『トリガール!』とバラエティに富んでいる。そしてここへ来て、実際の殺人事件を扱った主演映画『全員死刑』という強烈な作品が公開されている。間宮と本作を手掛けた鬼才・小林勇貴監督を直撃した。

本作のモチーフは、福岡で実際に起きた強盗殺人死体遺棄事件。実行犯は次男だが、事件に関わった家族4人全員に死刑判決が下された。間宮が演じるのは、実行犯の次男・首塚タカノリ役。監禁、暴行、絞殺、毒殺、銃殺を扱ったヘビーな本作は、『冷たい熱帯魚』(10)、『凶悪』(13)の製作陣の下、本物の不良少年を起用した野心作『孤高の遠吠』(15)の小林監督が商業映画の監督デビューを果たした。

間宮は出演を決める前に小林監督と会って話をし「共通するのは死ぬほど映画が好きだという点で、まずそこがわかり合えると思いました」と意気投合したことを明かした。監督の事件に対する温度感や距離感にも大いに共感したという。

「小林監督は、事件に対してすごく近い距離感で見る目線と共に、冷静に距離を置き、鋭い考察をするという目線の両方を持っていました。僕自身、本作をやるのなら、その両方の目線がないとダメだと思っていたので、そこに対しては全幅の信頼を寄せられたんです。それに監督ご自身がとても魅力的な方でした」。

ハハハと照れ笑いする小林監督は、間宮の演技に惚れ込んだ様子。「間宮くん、最高です。『全員死刑』の仮編集したものを、今まで一緒に撮ってきた不良たちに見せたら、彼らが『勇貴くん、いい男を見つけましたね。怖いです!』と間宮くんに一目置いたんです。その後『でも、プロの俳優だといろいろと大変でしょう?』と言われ、『何で俺がお前らにそんなことを心配されなければいけないんだよ』とも思いました(笑)」。

間宮も笑いながら「僕が小林監督と組むことを、ちょっと斜めに見ていた人たちもいたと思います。学園ものとかをやっている若手俳優で大丈夫か!?と。だからこそ、僕もそこをひっくり返そうと思って臨みました」と本作に挑んだ思いを述懐。

「実際に肌で感じてきものが蓄積した本物の不良の顔は、リアリティうんぬんの話ではなく、すでにリアルです。でも、役者は演技という手段を使ってそこに近づけることが仕事で、彼らに匹敵する演技をするというよりも、彼らを超えないといけなくて。そうしないと、彼らはもちろん、小林勇貴監督を評価している人たちにも納得してもらえないと思いました」。

小林監督も同じ意見だ。「僕はこれまで本物の不良を撮ってきたので、みなさんからは芋版のように『本物を使われたら勝ち目はないです』と言われてきました。でも、そんなわけないだろうと。だからこそ、間宮くんと一緒にその言葉を覆したかったんです」。

近年、コンプライアンスという言葉に縛られがちな映像作品だが、本作はそこに威勢良く斬り込んでいっている。小林監督は「映画界はどんどん窮屈になっていますが、僕はバイオレンス映画は不滅だとも思っています。なぜなら、一番最初に撮られた映画がバイオレンス映画だったから」と言って、リュミエール兄弟が1895年に撮り、映画の原点となった『ラ・シオタ駅への列車の到着』を例に挙げる。

「観客は、実際に列車が突っ込んでくると思って悲鳴を挙げましたが、まさにバイオレンス映画はそこから始まったんです。だから、時代によってコンプライアンスの強弱は違うけど、こういう映画は絶対になくならないと思います」。

間宮も「あれもダメこれもダメと言われ続け、小さくなりすぎて、きれいなものや害のないように見えるものだけが残されていく」と嘆く。「その結果、いつか収縮しすぎて爆発するんじゃないかと。僕はむしろ乱雑にいろんな表現があった方が健全だと思っています。でも、僕のマネージャーは誰かから『なぜこのタイミングで、間宮くんに『全員死刑』をやらせるのか?』と言われたらしいです(苦笑)」。

さらに間宮はこう続ける。「本作はすごく小規模のインディペンデント映画として、コアな客だけに刺さるものを目指すやり方もあったとは思います。でも、自分が主演をさせていただいたことで、本来こういう映画には絶対触れなさそうな女子高生たちが観に来てくれるとしたら、商業映画としてやった意味があるんじゃないかと。何より僕は、そういう出会いが大切だと思っています。

たとえば、僕が映画好きになったきっかけも、思いもよらないところだったりするし、今、キャピキャピしている女子高生も本作を観て、何かに開眼する人が出てくるかもしれない。そこから、もっといろんな映画を追求していくような大人になっていくのかもしれないし、そういうことも含めてすごく楽しみです」。

山崎 伸子

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