韓国版「花より男子」のヒットメーカーが語るヒットの法則とは?
「花より男子〜Boys Over Flowers」「宮〜Love in Palace」と、本国韓国のみならず、日本、中華圏でも大ヒットドラマを連発する制作プロダクション「グループエイト」。その代表であり、プロデューサーとしても活躍するソン・ビョンジュン氏が来日した。アジアを代表するヒットメーカーである彼に、テレビドラマというメディアの特性、ドラマ制作面での工夫、アジア戦略など、ヒットを生み出す法則を伺った。
まず、ドラマ作りの第一段階である企画立案の際、ソン・ビョンジュン氏はマンガコミックスを参考にするという。「私たちがドラマの原作にすることが多いマンガコミックスは、(読み手が)ストーリーに集中する、持続するのに最適なメディアだと思っています。マンガは想像力を働かす余地がありますし、集中してしまうので物語上のファンタジー、フィクションの部分を受け入れやすい。逆にテレビは最も集中力が持続できないメディアです。映画館ほど暗くないですし、鑑賞中に電話が鳴ったりいろんな障害(笑)が起きるわけですから。ドラマ作りのポイントは、その弱点とも言える部分を補うことから着想します。例えば「宮〜」は、“もし現代でも王室制度が続いていたら?”という発想からスタートしているわけですが、そこに親近感やリアリティーを盛り込むことに集中しました。主人公の祖母である皇太后は、クラシカルな衣装を身にまとい、侍女の前では毅然としています。しかし、彼女たちがいなくなると、こっそりTVのスイッチを入れて、連ドラを見始めたりします。これは原作にはなかったドラマオリジナルのシークエンスですが、そういうありそうなエピソードを盛り込むことを大切にしています。ドラマ向けのマンガコミックスもあれば、マンガコミックスとしては面白いのにドラマに不向きであきらめることもあります。僕はマンガコミックスを読みながら、よく頭の中で一度ドラマ化したりしていますよ」
また、アジア圏のファン層、それも女性には共通した部分があるとソン・ビョンジュン氏は語る。「上層階級の出身で美形。これは定番。性格は意地悪だけど、自分には優しい。現実とは違う(と思いたいのですが)のでしょうけど、ファンタジーの中では、そういう男性をアジア圏の女性は好むようです。最新作の「タムナ〜Love the Island 完全版」でも、純朴なヒロインは、優しくて誠実な英国人と、意地悪でとっつきにくい役人との三角関係に陥りますが、僕たちからするとなぜ?と思うのですが、女性の心理は複雑です(笑)。さらに、貧富の差イコール階級の差、そこには文化的な相違があり困難が生じるという描写も、とりたてて説明しなくても当然のように受け入れてもらえます。あと、女性は何か大切なことを決めるときには家族との絆や想いが絡んできて、葛藤します。この辺りもアジアならでは共通の認識として受け入れてもらえますね」
最近、ちまたを騒がす中国の大躍進。グループエイト、ソン・ビョンジュン氏はアジア戦略をどのようにとらえているのだろうか?
「グループエイトでは、どこの国の情勢がどうだからということを極力意識しないようにしています。自分たちは良いコンテンツを、面白いドラマを制作するだけ。以前、韓国のマスコミに、日本のマンガコミックスばかりを原作に選んでいると批判されたことがありますが、それは間違いで、韓国のコミックスも原作にしています。ただ、日本のコミックスが自分には適していると判断しただけなんですね。ですから、日本のマーケットを意識して人気の韓流スターを起用しようとか、中国でロケをしよう、とかそういうことはあえてしません。いいものを作ればいろんな国に受け入れてもらえるはずですから。こういう主張はアイロニー的にとらえられることが多いので残念です」
日本では最近、草食系の男性が増えてきているという話を振ると「実は韓国も同じ傾向にあります。その辺りの時代の流れはくみ取らないといけないですね(苦笑)」と話してくれた。
ちなみに「タムナ〜」の出演女優イ・スンミンと、1月に結婚したばかりのソン・ビョンジュン氏によれば「僕から見ると、日本の女性より韓国の女性の方がコワイ」そうで、「奥さまもですか?」と聞くと「ノーコメント(笑)」とかわしていた。【トライワークス】
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発売・販売元:エスピーオー