ヒップホップ界“仁義なき戦い”の犠牲者・2PACの壮絶な生い立ちとは?
トレードマークは頭に巻いたバンダナとタトゥーの入ったマッチョな上半身。そんなブラック・ギャング風の見た目とは裏腹なシャイなまなざし。90年代のアメリカ音楽界に彗星のように現われ、25歳で早逝した“2PAC”ことトゥパック・シャクール。アルバム総売上枚数7500万枚を超え、ロックの殿堂入りもしたラッパー兼俳優だ。そんな彼の生涯を描いた『オール・アイズ・オン・ミー』が12月29日(金)より公開。オーディションで選ばれた2PACにそっくりなディミートリアス・シップ・ジュニアが、ヒップホップ界のレジェンドの壮絶人生を体現する。
命懸けのヒップホップ紛争を、ライムで戦った男
2PACと言えば、ヒップホップ界史上最悪の東西抗争の中で凶弾に倒れた犠牲者として知られる。血生臭いギャングスタ・ラップが音楽シーンを席巻する90年代、その勢力はドクター・ドレーやスヌープ・ドッグなどの西海岸と、ショーン・パフィ・コムズ(現パフ・ダディ)などの東海岸に二分。西海岸側の2PACを含むラッパーたちが各々の楽曲のライム(ラップの歌詞)で互いを挑発&攻撃。その様相はライブ妨害やファン同士の喧嘩、アーティスト自身への襲撃に肥大化し、さらにはマフィアまで抗争に参戦し、対立が深刻化していく。そして96年、2PACはラスベガスで銃撃されることに。
伝説の男の生い立ちやその強い志も描かれる
映画では、2PACが元黒人解放組織党員(ブラック・パンサー党)の母に育てられた生い立ちが明かされる。スラムでの荒れた幼少時代ではありながら、毎日ニューヨーク・タイムズを読まされ、教養だけでなく、社会に貢献し権威を疑う精神も教育された。センセーショナルなゴシップで知られる彼だが、本作では差別に対する怒りを表現し世界を変えようとしたその革命家魂も垣間見られる。ピュアで向こう見ずな彼が、それゆえに抗争の矢面に立ってしまった波乱万丈なその生涯は、ドラマティックで心を打たれる。
アメリカでは、同じくヒップホップ界を描いた映画として大ヒットした『ストレイト・アウタ・コンプトン』(15)をしのぐ盛り上がりを見せ、全米初登場ナンバー1の大ヒットを記録した本作。衝撃的なカリスマ性を放つレジェンド、2PACの知られざる真実を目撃してほしい。
文/トライワークス