アカデミー賞有力候補『スリー・ビルボード』が描く“絶望”の中の“ユーモア”の意味とは?
第90回アカデミー賞で作品賞をはじめ6部門7ノミネートを獲得し、有力作品の一角として注目を集めている『スリー・ビルボード』(2月1日公開)から、監督とキャストが本作の魅力のひとつである“ユーモア”について語る特別映像が届けられた。
本作の舞台はミズーリ州の小さな町エビング。最愛の娘が殺されて数か月が経ち、一向に捜査が進展しないことに憤りを感じたミルドレッドは、町外れにある3枚の巨大な看板に警察への抗議文を掲示する。それをきっかけに、ミルドレッドと警察の諍いが始まり、町は不穏な空気に包まれていく。
到着した映像の中では劇中の印象的なシーンと合わせて、台詞や仕草などで表現される“ユーモア”について語られる。娘を殺された母親の復讐劇という重厚な題材の中で、主人公ミルドレッドを演じたフランシス・マクドーマンドは「ユーモアを探すのは至難の業だった」と明かす。
そして「でも状況を覆すことでダークな笑いが生まれるの。この物語においてユーモアは重要な意味を持つ」と、テーマと演出の意図をすべて理解しながら迫真の演技を披露した彼女。ゴールデン・グローブ賞に続いてアカデミー賞の主演女優賞を獲得する可能性は極めて高いだろう。
また本作で助演男優賞にノミネートされたサム・ロックウェルとウディ・ハレルソン、そして昨年『マンチェスター・バイ・ザ・シー』で注目を集めた若手俳優ルーカス・ヘッジズの3人が脱帽するほど見事な脚本を生みだしたのは、マーティン・マクドナー監督だ。
彼は「こだわったのはコメディ色を諦めないこと。そして絶望的な状況との戦いを、最初から最後まで維持すること」と明かす。相反する2つの要素を両立させた脚本と、それを最大限に活かす演出を見せたマクドナー。惜しくもアカデミー賞で監督賞のノミネートからは外れたものの、脚本賞のノミネートは下馬評通りに獲得。
マクドナー監督がこだわり抜いた、“絶望”の中でもがき続ける登場人物たちが作り出す “ユーモア”の意味とは一体なんなのか。その答えは劇場で確かめていただきたい。
文/久保田和馬