小林稔侍、娘役の壇蜜に「娘への愛情をたっぷり出したつもり」初主演映画で父娘役!

インタビュー

小林稔侍、娘役の壇蜜に「娘への愛情をたっぷり出したつもり」初主演映画で父娘役!

小林稔侍が『星めぐりの町』(1月27日公開)で、俳優生活55年目にして初めての映画主演を務めた。周囲を思いやり、実直に生きる豆腐屋・勇作という役は、黒土三男監督が小林をイメージして書き上げたキャラクターとあって、小林の優しい眼差しが人々を包み込むような温かな作品に仕上がった。小林と、勇作の一人娘・志保を演じた壇蜜に、共演の感想や人生における“大切な出会い”について語り合ってもらった。

主人公となるのは、娘・志保と二人暮らしの豆腐職人・勇作。東日本大震災で家族を失った少年・政美(荒井陽太)を預かることとなった勇作が、次第に彼と心を通わせていく姿を描く。俳優生活55年目にして手にした、映画初主演。小林は「どの世界でも、例えばお相撲さんなら横綱、俳優なら主演になりたいと思うものかもしれないけれど、僕は映画の主役をやるなんてまったく思っていなかった」と率直な思いを吐露する。

「まず俳優になった当初は食べていけるのか?という段階でしたからね。常々“人間、想いがあればなんでもできる”と思っていますが、映画の主役をやりたいとは思っていなかったんです」。だからこそ、今回のオファーには「フラッシュをたかれたみたいに、頭が真っ白になりました」とニッコリ。「こういう運がまだ自分にあったのかと思ってね。長生きしなきゃなと思いました。それにしても僕に主役を振ってくるなんて、黒土監督は相当変わっているよ」とお茶目に語る。

すると、自動車修理工場で働く負けん気の強い女性という、彼女自身の妖艶なイメージとは違った役にトライした壇蜜も「私も同じ思いです」と同調。「ヌードで世に出た私をこんなアットホームな映画で起用するなんて、監督はやっぱり変わっています。でも稔侍さんの初主演作品で娘役に選んでいただいて、とても光栄でした。監督が映画をつくるために奔走されている話も聞いていましたので、“私でよければ”という一心で臨みました」。

本作では、二人で暮らす父娘の距離感がリアルに表現されている。小林は「ベタベタしないのがいいよね」と本作の父娘について語る。「父親にとって娘というのは、女房とはまた違った愛情が出てくるもの。いやらしくならないよう、娘への愛情をたっぷり出したつもりです。壇蜜さんはすごくいじらしい女性だと思いました。(志保が)バイクに乗るシーンがあるんだけれど、外見からすると壇蜜さんはそういうタイプじゃないから、その姿もいじらしく見えてね。でも壇蜜さんは普段からバイクに乗っているというんだから、驚きだよ」。

一方の壇蜜も「現実の世界ではもう、なかなか父と長い時間を過ごすこともできないですから。一緒に“いただきます”と言える時間はなんて尊いんだろうと思いました」と父娘の時間を楽しんだ様子。「稔侍さんがお父さん役をやられているのをずっとテレビで見ていました。私も西田ひかるさんのようになったのかと思って」と小林と西田が父娘役で出演していたドラマ「デパート!夏物語」がとりわけ印象的だったそうで、「若者たち、奔放すぎるよ!と思って見ていたんです。そのなかで稔侍さん演じるお父さんだけが唯一、しっかりとした大人だった。今回はその稔侍さんと父娘という関係になれただけでも、本当にうれしかったです」。

劇中では、勇作との交流を通して、政美が心の傷を癒していく。人との出会いの大切さが身にしみる人間ドラマだ。2人にとって、人生における“大切な出会い”とはどんなものだろうか?

小林は「上京してこの世界に入った当時の僕は、本作の少年と同じ。僕にも、豆腐屋の親父の役割を担ってくれた人がいたんです」と振り返る。「なので撮影中もずっと、これまでの道のりを考えていたんですが、特に勇作が政美におにぎりを作るシーンは、お世話になった人のことをすごく思い出した。いつだって人との出会いが明日を開く、明日を生きる源になる。人は一人では生きていけないですからね。改めて人との出会いが大事なんだと思い出させてくれました」。

壇蜜は「落ち込んだり、しんどかったりしたときには漫画の台詞を思い出すことが多い」と漫画から大切な言葉をもらうことも多いそう。「そしてそれを“漫画の受け売りなんだけどね”と人に伝えることで、また誰かに気力を与えられたらいいなと思っていて。そういった意味では、漫画との出会いもとても大切なものです。例えば『魔法少女おりこ☆マギカ』という漫画に、“いつかはいまじゃないよ”という台詞があって。いつか滅びてしまう、いつかなくなってしまうと怯えている人たちに、“そのいつかはいまじゃないよ”という台詞なんです。勇気を感じる、とてもいい台詞ですよね。いいものを読んで、受け売り前提でもそれを誰かに伝えることができたら、とてもうれしいと思っています」。

取材・文/成田 おり枝

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