もうひとつのアカデミー賞?第38回ラジー賞でアニメ映画が快挙&あの名優が悲願達成!?
毎年アカデミー賞授賞式の前日に行われる「最低」の映画を決めるラジー賞こと、ゴールデン・ラズベリー賞。第38回を迎えた今年、史上初めてアニメーション映画に栄誉ある(!?)最低作品賞が贈られた。
ラジー賞に新たな歴史を切り開き、作品賞をはじめ監督賞、スクリーンコンボ賞、脚本賞の4部門を受賞したのは『絵文字の国のジーン』。日本発祥の絵文字を主人公に、スマートフォンの中で繰り広げられる大冒険を描き出した同作は、昨年夏に全米で公開されるやいなや「アニメ史上最悪の映画」という散々な批評を集め大きな話題に。
それでもその凄惨な出来栄えをひと目見ようと観客が押し寄せた同作は、サマーシーズンに7週連続で興行収入ランキングトップ10入り。最終的には興行収入8600万ドルを超えるヒット作となった。そんな絶大な支持を味方につけた同作は『トランスフォーマー/最後の騎士王』や『ザ・マミー/呪われた砂漠の王女』、そして2年前に大旋風を巻き起こした濃密なラブストーリーの続編『フィフティ・シェイズ・ダーカー』ら強豪を見事に抑え2017年の頂点(もしくは底辺)に選ばれた。
そしてワースト主演男優賞には『ザ・マミー/呪われた砂漠の王女』で鬼気迫る演技を見せつけたハリウッド屈指の大スター、トム・クルーズが3度目のノミネートで悲願達成。過去に『カクテル』(88)『宇宙戦争』(05)で主演男優賞にノミネートされたトムはいずれも受賞を逃しており、ブラッド・ピットとともに『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』(94)で受賞した「ワースト・スクリーン・カップル賞」以来の受賞を達成。個人での受賞は今回が初めてだ。
またワースト助演女優賞に輝いたキム・ベイシンガーも長年にわたる悲願を叶えた。これまで彼女は第7回に『ナインハーフ』で初ノミネートされながら『上海サプライズ』のマドンナに惜敗。つづいて第13回には『愛という名の疑惑』と『クール・ワールド』の2作でノミネートされるもメラニー・グリフィスに、第15回では『ゲッタウェイ』でノミネートされるもシャロン・ストーンに敗れる。
その後『L.A. コンフィデンシャル』で第70回アカデミー賞助演女優賞を受賞した彼女は、それからわずか3年で再びラジー賞に帰ってくる。第21回ではふたたび『ブレス・ザ・チャイルド』と『永遠のアフリカ』の2作を携え、メラニー・グリフィスとマドンナと直接対決。その年も雪辱は晴らせず、マドンナが5度目のラジー賞獲得を果たした。
2004年にラジー賞25周年を記念して行われた「ワースト・ラジー・ルーザー賞」(ラジー賞すら取らせてもらえない俳優を称える賞)に錚々たる顔ぶれとともにノミネートされるも受賞を逃したベイシンガー。なかなか手が届かなかったラジー賞だが、今年はゴールディ・ホーンやスーザン・サランドンといった先輩女優を見事抑えついに受賞にこぎつけた。
また、2014年に『エクスペンダブルズ3 ワールドミッション』でワースト助演男優賞にノミネートされ、その後アカデミー賞のほうで監督賞にノミネートされたことから昨年「ラジー・リディーマー賞」(アカデミー賞にノミネートされるなどで名誉を挽回した映画人に与えられる賞)に輝いたはずのメル・ギブソンが、早くも『ダディーズ・ホーム2(原題)』でワースト助演男優賞を獲得。見事ラジーに返り咲いた。
そして『タイラー・ペリーのまた出たぞ〜!マデアのハロウィン2』のタイラー・ペリーと『フィフティ・シェイズ・ダーカー』のダコタ・ジョンソンが熾烈な争いを繰り広げ、タイラー・ペリーに軍配があがったワースト主演女優賞。ペリーが黒人女性のマデアに扮する人気シリーズの前々作につづいて、2度目となる性別を超えたワースト主演“女優賞”受賞を果たした。
過去にはエディ・マーフィーとアダム・サンドラーが、男性でありながら女装演技によって女優賞を受賞しているラジー賞。今後もペリーがマデアを演じるシリーズは継続が決まっており、10作目が今年公開。ダコタ・ジョンソンも「フィフティ・シェイズ」シリーズの最新作『フィフティ・シェイズ・フリード』(日本今秋公開)が今年公開されただけに、2人の対決は来年も見られる…かもしれない。
文/久保田和馬