アカデミー賞授賞式が史上最低の視聴率!視聴者が投げかけた現実[前編]

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アカデミー賞授賞式が史上最低の視聴率!視聴者が投げかけた現実[前編]

現地時間の3月4日に開催された第90回アカデミー賞授賞式の視聴者数は約2650万人と、2008年に次いで最低だった昨年から、約20%もダウン。米調査会社ニールセンによれば、視聴者数が3000万人を割り込んだのは史上初で、最低視聴率を更新した。

今年も、アカデミー賞作品賞のノミネート作品9本中、全米興行成績が1億ドル(約105億円)を上回っているメジャー作品はわずか2作品(『ダンケルク』と『ゲット・アウト』)。大ヒット作『ワンダーウーマン』は総スカン、『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』などの超大作は技術部門などおきまりのカテゴリーのノミネートに収まったままで、何も変わっていない。

SNSの普及でテレビを見ない若者が増え続けていることや、スターが身近になった点も、視聴率低迷の要因だろう。また司会のジミー・キンメルが、過去の授賞式のように候補者や俳優らについてジョークを言わなかったことや、女性らを支持し、米トランプ大統領を非難する発言をすることは予想できたことで、実際に見た人々からも「面白みがない」「ワンパターン」と評判が悪かった。

「Me Too」「タイムズ・アップ」のムーブメントが盛り上がる中、アメリカ社会にはびこるこれらの問題をできるだけ網羅し、映画芸術科学アカデミーがメンバー構成を大幅に変える努力を進めている。

また作品賞などにはDV、人種差別、LGBTQを扱った作品がノミネートされ、監督賞にも史上5人目となる黒人監督と、マイノリティであるメキシコ人監督、史上5人目となる女性監督がノミネートされていた。にもかかわらず、なぜ、視聴率が上がらないまでも、ここまで激減してしまったのか。

関係者の話や、街角でのインタビューなどで本音を直撃してみてわかったことは、芸術の場を政治活動の場に利用し、セレブたちが声高々に活動家のごとく主張を繰り返す態度に、辟易している人々が多いことだ。

昨年の“白すぎるオスカー”に始まり「女性が少ない」「ヒスパニックがいない」と、ノミネートにクレームが殺到。しかし「まず、女性監督が全体の4%。実際の監督作が11%という現状を変えないと。今のままで毎年女性の監督がノミネートされるわけがない」「白人の中でも、ユダヤ教徒はあまりノミネートも受賞もしていない」という意見も。

アメコミ映画のキャスティングなどにも多様性を持たせている現状について「別に誰が何をやってもいいけれど、あまりにもわざとらしすぎる」「夢を見に映画館に行っているのに、現実社会と同じ人種構成にしらけてしまう」という意見もある。

また監督賞のプレゼンターを務めたエマ・ストーンが、5人の監督を紹介する際に「4人の男性と、グレタ・ガーウィグ」と女性だけを区別。4人の男性をまとめて紹介し、移民のギレルモ・デル・トロ監督、黒人のジョーダン・ピール監督を敬わなかったとして炎上したことからもわかるように「女性差別を訴えるのはいいけれど、特に今年は女性の主張ばかりが目立っているので見なかった」と答える女性も多かった。【後編に続く】

NY在住/JUNKO

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