『リメンバー・ミー』の石橋陽彩と松雪泰子が明かすアフレコの苦労

インタビュー

『リメンバー・ミー』の石橋陽彩と松雪泰子が明かすアフレコの苦労

第90回アカデミー賞で、長編アニメーション賞と主題歌賞を受賞したディズニー/ピクサーの最新作『リメンバー・ミー』(3月16日公開)で、日本吹替版声優を務めた石橋陽彩と松雪泰子。陽気な音楽に彩られた感動のファンタジー・アドベンチャーで、美しい歌声を披露した2人にインタビューし、アフレコの舞台裏について話を聞いた。

主人公は、ミュージシャンになることを夢見る少年・ミゲル(石橋陽彩)。でも、ミゲルは、ひいひいおばあちゃんのイメルダ(松雪泰子)の代から受け継がれてきた“音楽禁止”という掟があるため、人前でギターを弾くことも歌うことも許されない。そんなミゲルがひょんなことから、先祖の魂を迎えるお祭り“死者の日”に、カラフルな死者の国へと紛れ込んでしまう。彼はそこで陽気だけれど孤独なガイコツ、ヘクター(藤木直人)と出会い、彼と共に家族の秘密を知ることになる。

石橋は、テレビ番組「『Sing! Sing! Sing!』世紀の歌声!生バトル・日本一の歌王決定戦」のジュニア部門でグランプリを獲得するなど、幼少期から “奇跡の歌声”と絶賛された歌唱力の持ち主だ。今回演じたミゲルを「すごくマジメで喜怒哀楽が豊かだけれど、自分が決めたことには一直線で駆け抜けるキャラクター」として捉えつつ、自分と彼との共通点を見出していった。「僕もミゲルと同じく音楽が大好きで、ミュージシャンになりたいという思いは一緒だったから、そこはすごく演じやすいと思いました」。

映画やドラマでの活躍はもちろん、舞台「キャバレー」などでミュージカルの経験もある松雪は、イメルダについて「すごく威厳があって強いおばあちゃん」と捉え「その威厳と強さを、声の表現でどう出していくべきか」と試行錯誤していったそう。

イメルダが音楽を禁止したのは、自分の家族に起きた、ある悲しい出来事のせいだ。「かつてイメルダは音楽によって愛する人を失い、1人で家族を背負って生きていかなければならなかった。彼女にはとにかく家族を守らなければいけないという強い信念があり、それが音楽禁止令という掟になったのではないかと思います」。

アフレコ時、ちょうど変声期に差しかかった石橋は、「最初にいつもの歌い方で歌ってみたら、『大人っぽくなりすぎる』と言われました。『小学校4~5年生くらいに戻った感じで歌ってほしい』と言われて、3年くらい前の声に戻して歌うのがすごく難しかったです」と、発声にかなり苦労したそうだ。

「収録期間が長かったので、夏休みを挟んで録った時、以前よりもさらに声が低くなっていました。声変わりの対策はずっとしてきていて、ファルセットという裏声をたくさん出し、高音をキープすることで音域の幅を広げたいと思ってやってきてはいましたが、今回は全曲キーがすごく高かったので、高音を出すのが大変でした」とも語る。

松雪は石橋の歌声について「聴くだけで涙が出てくる歌声」だと絶賛する。「私は陽彩くんみたいに技術がないので、ずいぶん前から必死に練習し、何度もリハーサルをやらせていただきました」。さらに、「私が歌った曲はメキシコの民謡でしたが、あの音階で歌を歌うこと自体が人生初で、抑揚をとらえるのがすごく難しかったです。音階をきれいに追いすぎてしまうと、ダイナミックさがなくなってしまう。監督からは『パッションやエネルギーがあるように歌ってほしい』と言われたので、あまり考えずに『1回1テーク、自由に歌わせてください』とお願いして歌いました」と振り返る。

石橋は、松雪の歌唱シーンについて「本当にすばらしかったです!」と賛辞を送ると、松雪は「本当?良かった」とうれしそうに微笑む。「私はミュージカルを見るのも出るのも大好きですが、歌がメインの作品には出演したことがなかったので。今回はこんな大作ですばらしい役をいただけて、本当に光栄に思っています」。

最後に、新年度がスタートする4月に向けての抱負や今後の展望を聞いてみると、石橋からは「声優初挑戦ながらもこんな大役をいただけたので、今後もまた新しい声優の仕事やミュージカルの仕事につなげていきたいと思っています」と頼もしいコメントが。

松雪は、4月からスタートする朝の連続テレビ小説「半分、青い。」で、永野芽郁演じるヒロインの母親役を務める。「しっかりとしたお母さんになっていたらいいなと思っています」。さらに松雪は「今回、すばらしいご縁をいただいたので、日々精進していきます。ミュージカルは本当に大好きなので、今後も機会があれば出演させていただきたいです」と、ミュージカルへの意欲も口にした。

取材・文/山崎 伸子

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