『ピーターラビット』のヒロインが語る、ウィル・グラック監督と原作者ポターへの想い
世界中から愛されているビアトリクス・ポターの名作絵本を実写映画化した『ピーターラビット』(5月18日公開)で、ヒロイン・ビア役を演じたローズ・バーン。『ANNIE アニー』(14)でも組んだウィル・グラック監督の下、彼女はイマジネーションを膨らませ、イタズラっ子のウサギ、ピーターたちと愉快な共演を果たした。
本作の舞台は、2017年に世界文化遺産に登録された風光明媚なイギリスの湖水地方。画家のビア(ローズ・バーン)は、自宅の隣の木に住むウサギのピーターたちをとても可愛がっていた。ところがある日、ピーターたちの前に、大の動物嫌いで潔癖症のマグレガー(ドーナル・グリーソン)という天敵が現れる。
元々、子どものころから「ピーターラビット」の絵本を読んでいたというローズは、ウィル・グラック監督からのオファーを心から喜んだという。「監督とは以前も仕事をしたことがあったし、私はかなり長い間子どもが楽しめるような映画に関わっていなかったので、本作に出演できると聞いた時はすごくうれしかった。私には子どもがいるし、周りにも子どもを持つ人がたくさんいるから、きっと子どもたちもこの映画を好きになってくれるのではないかと思ったの」。
ビアトリクス・ポターは絵本作家でありながら、世界で初めて文学作品のキャラクターをライセンス登録するなど、商才も持ち合わせていた女性だ。湖水地方を心から愛したポターは、生涯を通して農場経営や自然保護に努めた。彼女の死後は、所有するすべての土地が自然保護団体ナショナル・トラストに寄付され、いまも美しい自然や動物たちが守り抜かれている。
ローズは、そんなポターを「本当にすばらしい女性で、彼女からものすごくインスピレーションを受けた」とリスペクトしてやまない。「当時のポターは、女性が仕事をしていく上でのパイオニア的存在だったと思う。女性としてもすばらしいし、アーティストとしても美しい作品をたくさん残してくださった」。
アニマル・ロジック社が手掛けたCGのピーターたちは、実に表情豊かで、機敏な動きも愛嬌たっぷりだ。彼らとの共演についてローズは「想像力を働かさなければいけなかったし、技術的な側面での難しさもあった。でも私は、そういう役柄にチャレンジすることに、すごくやりがいを感じたの」と意欲的に臨んだよう。
「そういう時は、自分のエネルギーレベルを高くし、ユーモアをもって映画に臨むことが大事だと思ったの。監督が本当にエネルギッシュな方だったから、とても助かったわ」と、彼女はウィル・グラック監督に感謝する。
ビアのキャラクターは、監督と話し合いながら、一緒に作っていったそうだ。「監督はすごくおもしろい方で、子どもがそのまま大きくなったような人よ。ちょっとした目線や仕草、言葉で意思疎通ができる関係性だったから、スムーズでやりやすい現場だった」。
全体の作風については「もしも本作がゆっくりしたペースの映画だと、きっと子どもが観てもおもしろくないと思うの。そういう意味では、元気いっぱいの監督にはぴったりの映画だった。さらに、大人が観ても楽しめるように、難しい技術面でも工夫されていた」と感じたそう。
ローズは、自身が演じたビアについて「おそらくポターは、ビアを遠い親戚やいとこのようなイメージで描いたのではないか」と捉えた。「ビアの現代的な要素と、伝統的な要素とのバランスを上手く取って演じるよう心がけたの。そもそも、ポター自身も世界的に有名な人気作家だし、そういう意味でも敬意を払って演じなければいけないと思ったわ」。
ピーターと激しい攻防をしていくトーマス・マグレガー役のドーナル・グリーソンのハジケた熱演も見ものだ。ビアは、トーマスとピーターが畑を巡って繰り広げるドタバタ劇のシーンが大好きだそう。ドーナルについては「とてもすばらしい俳優。また機会があったら共演したいくらいよ。20代のころ、彼のお父さん(ブレンダン・グリーソン)と『トロイ』で共演させていただいたけど、お父さんもすてきな俳優だったわ」と語った。
ローズは、完成した映画について「すごく可愛くて、楽しくて、チャーミングな作品よ」と太鼓判を押す。「思ったよりもアクションシーンが多いから、『ホーム・アローン』のような映画かと思いきや、動物に脅されたりするシーンもあって、すごくおもしろい。全体のテンポ感も速くて、驚く要素もたくさんあるの。ぜひ家族で一緒に映画館へ行って、楽しんでほしいわ」。
取材・文/山崎 伸子