千葉雄大が30代に向けて図る、パブリックイメージ「可愛い」からのシフトチェンジ
ビアトリクス・ポターの名作絵本をハリウッドで実写映画化した『ピーターラビット』(公開中)で、日本語吹替版の声優とアンバサダーを務めた千葉雄大。演じたピーターと千葉の共通点は“決して可愛いだけじゃない”という深みやおもしろみだ。アラサーとなっても“癒し系可愛い男子”として人気を誇る千葉に、本作のアフレコ秘話や、30代に向けての展望を聞いた。
舞台は、2017年に世界文化遺産となった風光明媚なイギリスの湖水地方。たくさんの仲間たちと大きな木で暮らすピーターは、大好きな画家のビア(ローズ・バーン)にも可愛がられ、平穏な日々を送っていた。ところがある日、大の動物嫌いで潔癖症のマグレガー(ドーナル・グリーソン)という天敵が現れる。
オリジナル版でピーターの声優を務めたのは、俳優でコメディアンのジェームズ・コーデンだ。千葉は「彼と同じような感じを求められるのであれば、おそらく僕は選ばれなかったと思いますし、国によって色が違うところが吹替版の良いところだと思います。声はそんなに作らず、大事にしたのは軽快なテンポ感です」と、イギリスならではのジョークを、日本語でどう伝えられるかを意識しながら演じたそうだ。
実写版のピーターは世界中で愛されてきたアイコンの魅力と、ウサギそのものの生態をほどよい塩梅でミックスさせたキャラクターに仕上がった。千葉のお気に入りは、ピーターの耳による感情表現だ。「耳が可愛いんです。誰か人が来た時、ピンと伸びたり、しょんぼりすると後ろに垂れたりする。揺れる毛並みもいいですね」。
また、「ウサギの役作りをしたんですか?という質問もたまに受けます」とおちゃめに言う千葉。「口の動きが好きで、アフレコの時も真似てやったりもしました。ネットで『実写化でもいけるんじゃない?』という書き込みを見て、どういうこと!?と(苦笑)。歯が似ているのかもしれない」。
千葉は声優の仕事について「僕のような役者にとってはけっこう難しいし、ハードルが高い気がします。疑った目で見られがちなので…」と不安も感じたとか。「でも、ダメ出しは完成版を観てからしてほしい。観ておもしろくなかったのなら仕方がないけど、観る前から言われるのはどうかなと。今回は自分が持っているものを100%出せたので、ぜひ観てほしいです」。
最近は声の仕事も増えてきたそうだ。「ナレーションの仕事をいただくことが多くなったなと感じた時、今回のオファーをもらいました。もちろんプロの声優さんはすごいと思いますが、声優さんがバラエティ番組に出たり、ミュージカルの舞台俳優さんが連続ドラマに出たりもされているので、その逆もありかなと。僕自身は、そういう垣根を取っぱらえたらいいなと思っています」。
現在29歳となった千葉は、本作のイベントで「僕にも野性的な一面があります」と言っていた。『帝一の國』(17)や『ReLIFE リライフ』(17)では、違和感なく高校生役を演じていた千葉だが、今後は「可愛い」というパブリックイメージについて、どうシフトチェンジを図っていくのか?
「僕は飽き性なので、あまり“可愛い”ばかりを求められると…」と言いながら「もちろん仕事だし、“需要と供給”だとは思っていますが、供給過多になると、自分がしんどくなってくる。最近はそういう役も減ってきてはいますので、自然にシフトチェンジしていけたらいいですね」。
サービス精神が旺盛な千葉は、舞台挨拶などで常に場が盛り上がるようなコメントをし、爪痕を残してきた。けれど、千葉の印象を「控えめで礼儀正しい」と語る共演者も多い。
「僕はそんなにしゃべるのが得意じゃないし、リーダーシップを取るタイプでもないから、仕事を始めたてのころは、当たり障りのない感じのコメントしか出てこなかったんです。でも、やっぱり暗い顔をしているよりは、笑っていたほうがいいし、その場を楽しもうと思うようになっていきました。正直に言うと、爪痕を残そうとは毎回思っているんですが、果たして自分の言う言葉が相手にとっておもしろいかどうかはわからないので、思いついたことを言っているだけです」。
同世代の人気俳優が多数並ぶ舞台挨拶においてもしかりで、その存在感をしっかり発揮してきた千葉。「例えば、『帝一の國』の時なんて、みんながしゃべるし、それぞれにおもしろいんです。でも、そこで置物になっているのではなく、なにか振ってもらったら、返す球は用意しておくようにしたくて。出す出さないは別として、そこは常に考えています」。
そんなふうにスタンバイするようになったのは、いつごろからなのだろう?「やっぱり場数だとは思います。バラエティ番組に出るようになり、『初めまして』から『お久しぶりです』と言えることが増えていきました。そういう居心地のいい空間ができていくことで、初めての現場であっても、普段どおりの自分が出せるようになっていったのかもしれないです」。
最後に『ピーターラビット』の見どころについてこうアピール。「ピーターは可愛いだけじゃなく、自分の起こしたことに対して、最後はちゃんとケツを拭くという男らしさも持ち合わせています。また、本作には本当に悪い人は出てこないし、エンドロールまですごく幸せな気持ちで観られるので、ぜひ劇場へ足を運んでください!」。
取材・文/山崎 伸子