ウェス・アンダーソン流の“日本”がここに!『犬ヶ島』の裏側を大公開
『グランド・ブダペスト・ホテル』(13)など独特の世界観を持つ作品で人気を集めるウェス・アンダーソン監督が、全編日本を舞台に日本文化への愛情を、日米の豪華キャストで描き出したストップモーション・アニメーション『犬ヶ島』(公開中)。このたび本作からアンダーソン監督の美術へのこだわりが垣間見える特別映像が到着した。
物語は20年後の近未来の日本。“ドッグ病”にかかってしまったメガ崎市の犬たちが、横暴な小林市長によってゴミ処理の島“犬ヶ島”に追放されてしまうことから始まる。小林市長の養子である12歳の少年・アタリは、追放されてしまった愛犬・スポッツを救うため、ひとりで“犬ヶ島”に乗り込んでいくのだ。
アンダーソン監督作品の美術といえば、作品によってテーマの決まったカラータッチが施さているのが大きな特徴。『ファンタスティック Mr.FOX』(09)以来となるストップモーション・アニメで生み出された本作では、アンダーソン監督の目を通した日本特有のビビットカラーと、対照的に荒涼としながらもワクワクしてしまうような幻想的で繊細な美術がそれぞれ登場。
到着した映像の中では、人間や猫たちが活気溢れる姿で生活しているメガ崎市がカラフルなネオンで輝く、近代的で混沌とした騒音の町である一方で、犬たちが追放されたゴミ溜めの島“犬ヶ島”には、紙クズや鉄クズの塊によって形成された殺風景な景色が広がり、その2種類の光景が絶妙なコントラストを生みだしている。
日本を舞台にした仮想の街を生みだす上で、日本の実在なの場所や日本映画を参考にしたというアンダーソン監督。先日13年ぶりに来日した彼は、本作を制作中にも日本を訪れたことはなかったそうで「実際に行ったことはないのだけど、Google Earthでその場所を歩くことができるんだよ!」と、驚愕の方法でロケハンを行なっていたことを告白。そして「最後のシーンに登場する像はハチ公を参考にしているんだ。劇中のものは檻に入ってるけどね」と、東京のシンボルともいえる存在をGoogle Earthで研究したことを明かした。
そしてアンダーソン監督は「この映画は様々な要素をひとまとめに混ぜ合わせて、完全にファンタジーとなっている。だけど実際の日本文化や、特に日本映画に惹かれたファンタジーとして、日本人のみんなが日本らしさを感じてもらえる作品になっていることを願っているよ」と、日本への多大なるリスペクトを込めたことを語る。細部にまでこだわり抜かれたウェス・アンダーソン流の“日本”の姿を、是非とも劇場の大きなスクリーンで堪能してほしい!
文/久保田 和馬