日本からはわかりにくい、北朝鮮に暮らす人々の“日常”。韓国籍を捨てた監督が見た風景とは?

コラム

日本からはわかりにくい、北朝鮮に暮らす人々の“日常”。韓国籍を捨てた監督が見た風景とは?

10年半ぶりに行われ記憶に新しい南北首脳会談や、6月12日(火)に実施が予定されている史上初の米朝首脳会談などで、改めて注目が集まっている朝鮮民主主義人民共和国(略称、北朝鮮)。かの国の人々の暮らしを追ったドキュメンタリー映画『ワンダーランド北朝鮮』が6月30日(土)より劇場公開される。

多くの謎に包まれた国“北朝鮮”に住む人々の暮らしに迫ったドキュメンタリー『ワンダーランド北朝鮮』が6月30日(土)より公開
多くの謎に包まれた国“北朝鮮”に住む人々の暮らしに迫ったドキュメンタリー『ワンダーランド北朝鮮』が6月30日(土)より公開[c]Kundschafter Filmproduktion GmbH

韓国籍を捨てた監督が、北朝鮮へ渡る!

北朝鮮といえば、金日成から三代続く独裁国家で、謎に包まれた国というイメージを持つ人が多いだろう。本作のメガホンを取った韓国出身のチョ・ソンヒョン監督は、彼女にとってのお隣の国“北朝鮮”で暮らす人々の日常に興味を抱き、取材を決意。現地で取材・撮影をするため、チョ監督は韓国籍を放棄しドイツ国籍を取得した。韓国と北朝鮮は国交を締結していないため、北朝鮮へ渡るにはこのような処置が必要だったそう。仮に韓国政府の許可なしに北朝鮮に渡航した場合は、それが韓国への裏切り行為とみなされ、韓国へ再入国次第、逮捕され懲罰の対象となるようだ。

韓国出身のチョ・ソンヒョン監督(写真右)は韓国籍を捨て、ドイツ人として北朝鮮へ入国した
韓国出身のチョ・ソンヒョン監督(写真右)は韓国籍を捨て、ドイツ人として北朝鮮へ入国した[c]Kundschafter Filmproduktion GmbH

人々の日常から北朝鮮を取りまく状況や文化の違いを知る

国籍を変えるという覚悟で乗り込んだチョ監督が向き合ったのは、北朝鮮で暮らす人々の日常だ。エンジニアや農家、画家、工場労働者など取材対象も様々で、洋裁工場を訪問するシーンでは、監督が工場関係者に「どんな国へ輸出しているのか?」と質問。関係者から「中国を経由してアメリカやカナダへ輸出している」という話を引き出し、諸外国からの経済制裁の影響を描いてみせる。一方で、「メイドイン朝鮮と表示できたらいいですね」とやさしく語りかけたり、従業員たちと一緒に体操をするなど、北朝鮮の人々との触れ合いを大切にしているようだ。

【写真を見る】文化や風習の違いを映し出す。北朝鮮で暮らす人々の日常とは!?
【写真を見る】文化や風習の違いを映し出す。北朝鮮で暮らす人々の日常とは!?[c]Kundschafter Filmproduktion GmbH

さらに監督は、庶民が遊びに訪れるレジャー施設にもカメラを向ける。プールを取材するシーンでは、笑顔で水遊びに興じる庶民の姿にフォーカス。そんな場面でも監督は、女性がビキニを着ていないことに気づき、施設のスタッフに質問。スタッフから「ビキニは我が国の風習と異なります」という言葉を引き出し、文化や風習の違いを浮き彫りにしている。

きれいに整備されたプールなどのレジャー施設
きれいに整備されたプールなどのレジャー施設[c]Kundschafter Filmproduktion GmbH

チョ監督が監視や検閲を受けながらも、韓国出身の映像作家として、真正面から北朝鮮の日常に迫ったドキュメンタリー映画『ワンダーランド北朝鮮』。現在の日本にとって“近くだけど、遠い国”北朝鮮のいまを映像で体感してみてはいかがだろうか。

文/トライワークス

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