是枝裕和監督、『万引き家族』は「納豆ご飯のような映画です」
第71回カンヌ国際映画祭で最高賞のパルムドールを受賞した是枝裕和監督作『万引き家族』公開記念舞台挨拶が、6月9日にTOHOシネマズ六本木ヒルズで開催。リリー・フランキー、安藤サクラ、松岡茉優、樹木希林、子役の城桧吏と佐々木みゆ、是枝裕和監督が舞台挨拶に登壇した。是枝監督は佐々木からお手製パルムドールをプレゼントされて笑顔を見せた。
パルムドール受賞について是枝監督は「本当はもう少し小さく産んで、小さな声で届けていくような作品を作ろうと動きだした映画です。結果的にこんなに広く、遠くまで届けることができたのは、スタッフやキャストがとてもいい形でこの作品を支えてくれたおかげだと思っております。すごくうれしいです」と感謝した。
家族の母親役を演じた安藤は「この家族と過ごした時間はすごく短くて穏やかなのに、ところどころとんでもない爆発と興奮が起こる現場で、感覚がおかしくなりそうでした。ここにいるみなさん、すごい方なのに、納豆ご飯みたいな感じなんです」と“安藤節”を炸裂させる。
リリーが「いつもどおりのジョークです」とツッコむと場内は大爆笑。安藤はさらに「キャビアを食べてるような感じなのに、納豆ご飯のような感じで」、「(みなさんの)器が納豆ご飯を食べるお茶碗のように、心地よく受け止めてくださる」と必死に補足し、また会場を笑いに包んだ。
樹木もカンヌ映画祭がいかにステータスがあるかという説明をしたあと「みんなが目指しているのがパルムドールなんです。それをあんな寒いなかで撮った、あんな貧しいのが、ひょいって獲れたってことは偶然じゃないんです。世界に認められたのは快挙だと。大変みんなも感謝しています」とユーモアを交えて監督をねぎらった。
最後に是枝監督は、安藤のコメントを受ける形で「納豆ご飯のような映画です。なので、毎日食べられると思います。観るたびに味わい方が変わる映画になったのではないかと」と締めくくった。
『万引き家族』は、犯罪でしかつながれなかった家族の許されない絆を描く人間ドラマ。日本人監督がカンヌでパルムドールを受賞したのは、1997年の今村昌平監督の『うなぎ』以来21年ぶりの快挙となった。
取材・文/山崎 伸子