カンヌ映画の日本代表・細田守と是枝裕和、“家族”を描く名手2人が和やか会合!
いよいよ授賞式発表を控えた、第71回カンヌ国際映画祭。それぞれ最新作で選出されている細田守監督と是枝裕和監督に、現地で話を聞いた。かねてよりトークショーで対談するなど交流のある2人。『万引き家族』の上映と取材を終え、あとは授賞式を待つばかりの是枝監督が、16日朝の『未来のミライ』上映を観て、細田監督に会いたいとやってきたのだ。
「昨日の上映、朝早いのに満員になっていて、雰囲気が温かくて、いい上映でしたね。お客さんの期待が高まっているのがよくわかりましたよ」と是枝監督。続けて「僕は細田監督に対して特別な近さを感じているんですよ。モチーフの膨らませ方とか、僕がアニメを作ったらこう描きたいなと思うことが多いんです。限られた空間で人間を動かして物語を作っていくところとか、ね」とコメント。細田監督がうれしそうに顔をほころばせる。
「それとさ、家族について考えたり家族を描くことって、自分に子どもが出来ると変わるよね。自分の子ども時代を思い出したりしません? 実感込もるでしょう。時間や空間をいろんな軸で伸ばして考える、とか」という是枝監督に、うんうんとうなずく細田監督。
細田監督は「あちこちの映画祭で、Q&Aがあるとよく聞かれます。是枝監督の作品と似ているとか、2人とも家族をモチーフにしている意味はなんだ、とか。日本の家族はどうなっているんだ、とか。是枝さんの作品はいつも拝見していますし、尊敬しているので、似ていると言われるなんて光栄です。自分でも是枝さんと近いモチーフで作品を作っているなとは思います」と声を弾ませる。
「出演する人も近いよね。今回“青年”の声を聞いて、あれ、もしかして福山(雅治)さん?と思ったら、やっぱり。声の好みが似ているのかな。ここでは福山さんのしゃべり方を消しているけど、あのスマートさはさすがだなと思いました」と是枝監督。
「ですよね。今回の青年のキャラクターは『三度目の殺人』の福山さんにダイレクトに影響を受けていますもん」と細田監督が明かす。
今回の2人の作品は、どちらも幼児が物語の鍵を握っている。けれど2人の子どもの社会的な境遇は正反対とも言える。
「いや、どちらも愛に飢える子どもの話でしょう。内的な変化は共通しています。細田監督がすごいなと思ったのは、くんちゃんの目から見た世界を広げすぎないでしょ。せいぜい保育園の行き帰りくらい。家の中だけで繰り広げられるアドベンチャーなんだよね。『万引き家族』も7割は家の中の話なんですけどね」と是枝監督が話していると、突然ジョギング中のフランス人男性が細田監督に話しかけてきた。
「『MIRAI』(『未来のミライ』の英題)はグレートだよ。妻と観たんだけれど、すばらしかった!」とサムズアップし、走り去る。「こういうのが、カンヌだよねえ」と是枝監督と細田監督が笑顔を見せる。
最後に「くんちゃんの顔と、細田監督の顔、そっくりですね」と聞いてみると、「そりゃそうですよ。うちの息子がモデルだもん」と、生まれたときのくんちゃん(名前は違うけれど)の写真をスマートフォンで見せてくれた。その2人の顔も、なんともそっくり。両監督の人柄どおり、ほのぼのとした会合となった。
『万引き家族』は6月8日(金)公開、『未来のミライ』は7月20日(金)公開。
取材・文/まつかわゆま