『空飛ぶタイヤ』の長瀬智也、ディーン・フジオカ、高橋一生が仕事への本音を赤裸々トーク

インタビュー

『空飛ぶタイヤ』の長瀬智也、ディーン・フジオカ、高橋一生が仕事への本音を赤裸々トーク

長瀬智也、ディーン・フジオカ、高橋一生という、魅惑的な俳優3人が並ぶビジュアルを見ただけで、期待感に胸が弾む映画『空飛ぶタイヤ』(6月15日公開)。池井戸潤のベストセラー小説としては初の映画化作品となった。30代後半の同世代スターである3人を直撃すると、お互いに意気投合し、腹を割った赤裸々トークが展開された。

本作で長瀬が演じるのは、突然起きたトレーラーの脱輪事故で、整備不良を疑われる運送会社社長・赤松徳郎役。赤松は車両の欠陥に気づき、製造元の巨大企業・ホープ自動車を訴えていく。ディーンは、ホープ自動車の社員・沢田悠太役を、高橋一生は、グループ企業であるホープ銀行の社員・井崎一亮役を演じた。

巨大企業を糾弾しようと孤軍奮闘していく赤松と、自身の保身や出世を考える野心家でありつつも、社内のリコール隠しの実態を知り、心が揺らぐ沢田、銀行マンとして誇りをもち、ホープ自動車への融資に二の足を踏む井崎と、それぞれが葛藤を抱えるなかで、勇気ある行動に出る。

長瀬は、男たちの建前と本音に揺らぐ部分にシンパシーを覚えたようで「人それぞれ形は違うけど、僕は考え方としてはすごくシンプルで、いつも『いいものを作りたい』ということだけなんです。でも、シンプルなことが実は一番難しい。それだけでは、社会に通用しないときもありますから。それが僕にはわからなくて。泣いてもいいですか(笑)」と本音を吐露する。

ディーンが「先輩、おもしろすぎます」とツッコむと、高橋も「どんどん内側に来ていますね」と言って3人が笑い合う。

長瀬は「歳を重ねると、そういうことも知ってしまう。もちろん自分の正義が正しいと思ってはいるけど、相手側の正義も理解してしまうから苦しくなるんです。本作には、人間が生きていくうえでの大変さが象徴されていると思います」とコメント。

高橋も「完全に同意します」と長瀬を見つめる。「20代前半のころなら、そこまで想像できていなかったことも、この歳になれば、『僕がこの人ならどうするだろうか?』と、相手の気持ちを想像できるようになってくるんです。けれどそれは、とても大事なことだとも思っています」。

ディーンは2人の言葉を聞いて「すごくドンピシャな意見かと」と深くうなずく。

長瀬は「ただ、日々いろんなことを考えたり感じたりして生きることで、それが作品のスピリッツにもなる。ロックだったら、叫んでいる姿を見てぐっと来たりするでしょ。役者も役としてアウトプットする時、なんの苦しみも暗闇も知らない人が演じたら、たぶん突き刺さらないと思います。どこか闘っている部分がないと、そこにパワーが宿らない」。

続いて、今年で40歳になる長瀬と、37歳のディーンと高橋に、迎える40代についての展望を聞いた。

長瀬は「プロフィールの年齢が変わり続け、その過程で自分の体や気持ちの変化はあったりはしますが、40歳になったらこうしようとか、こう生きようとかは、昔ほど考えなくなってきた気がします。4Kがだんだん怖くなってきましたが(笑)」と振ると、ディーンは「さらに8Kも出ますから」とうなずく。

長瀬は「勘弁してほしいです」とお茶目に笑う。「でも、逆に言えば、いまの自分にしかできない役や、表現方法はあると思います。お芝居も歌も、歳をとってからのほうが、表現は豊富になってきて、僕は楽しいです。今日はどれをチョイスしようかな?と、朝の洋服を選ぶくらいのワクワク感があり、それがクリエイティブな部分につながっていく感じです」。

ディーンも「僕も40歳でどうこうというよりは、ずっと楽しみ続けたい」と言う。「役者業に限って言えば、自分がプロデューサーや監督にならない限り、自分から仕事を作れないわけで。だから俳優のお仕事は、自分で作るというよりも、全力でお手伝いをさせてもらっているという感覚です。自分がこうやりたいと求めるだけでは、ただのエゴですし。ただ、音楽をやっている時もそうですが、楽しむという気持ちがすごく大事だと思っています。また、その質問を聞いて、この先、子どもたちとどうやって間を過ごそうかとも考えてしまいました」。

「意外とそういうことが大事なのかもしれない」と言う長瀬。ディーンも「自分が好きなことに対して情熱をもってやり続けながら、家族における自分の責任も果たしていく」と考えているそう。

長瀬が「歳をとればとるほど、仕事じゃないところの大事さも知っていく気がします」と相づちを打つと、高橋も「本当にそう思います」と心から同意する。「どんどん人間的なところにもっていかないと、アウトプットができなくなると、最近実感しています。役者にとっては、なにげない生活も大事になってくるのではないかと思います」。

取材・文/山崎 伸子

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