平均年齢73歳!あの”ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ”がキューバ音楽の火を再び灯す
2000年に日本でも公開され、世界を熱狂の渦に巻き込んだドキュメンタリー映画『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』(99)を覚えているだろうか。当時は知られていなかったキューバの伝統音楽“ソン”にスポットを当てた同作は、現役を退き忘れ去られていたキューバの伝説的ミュージシャンたちが、人生を取り戻したかのように活き活きとセッションする姿と、独特のリズムを持ったソンの持つ熱狂が観る者の心を奪い、世界中にセンセーションを巻き起こした。
18年の時を経て、老ミュージシャンたちの音楽と物語が帰ってくる
1997年、世界的ギタリストのライ・クーダーがプロデュースしたアルバム「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」は、グラミー賞を受賞。同名のバンド“ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ”としてもワールドツアーが組まれ、その様子を中心に収めたヴィム・ヴェンダース監督による映画は、アカデミー賞にノミネートされ、第53回エディンバラ国際映画祭で観客賞を受賞した。
あれから18年、映画『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ★アディオス』(7月20日公開)は、彼らの最後のツアーを追いながら、あのときの老ミュージシャンたちの今を映し出す。ヴェンダースは製作総指揮に回り、『カウントダウンZERO』(10)などの社会派ドキュメンタリーで知られるルーシー・ウォーカーが監督を務めた。当時すでに年老いていたメンバーの多くは18年の間に命を全うし、平均年齢73歳の5人が残り、新たな物語(ツアー)を始める。中でも86歳でステージに立つオマーラ・ポルトゥオンドの姿は、“アフロ・キューバン”(キューバ色の強いジャス)の誇りに満ち、威風堂々としていると感じる。
また本作には、彼らの活動を記録した貴重な映像、前作ではカットされた未公開映像も収録されている。メンバー同士で年甲斐もなく激しく意見を交わす様子は、キューバのミュージシャンとしての誇りに満ちあふれていて、なかなかの迫力だ。前作を観ている人であれば「あのとき、実はこんなことが起きていたのか」と、新しい発見を楽しむことができるだろう。