『サイコパス』『君の名は。』…ヒット作手掛ける宣伝Pの弭間友子が語る“スタジオコロリドの魅力”とは?

インタビュー

『サイコパス』『君の名は。』…ヒット作手掛ける宣伝Pの弭間友子が語る“スタジオコロリドの魅力”とは?

森見登美彦の同名小説を気鋭のアニメーションスタジオ、スタジオコロリドが映画化する『ペンギン・ハイウェイ』(公開中)。本作の宣伝プロデューサーで東宝株式会社の弭間友子は「若さや、キャラクターの持つ柔らかさ」とスタジオコロリドの魅力を語る。これまでも『劇場版 PSYCHO-PASS サイコパス』(15)、『君の名は。』(16)、『夜は短し歩けよ乙女』(17)など良質なアニメ映画の宣伝を担当してきた弭間が感じる、スタジオコロリドの可能性について話を聞いた。

本作は、突然現れたペンギンの謎を解明しようとする小学4年生・アオヤマ君の、ひと夏の冒険をみずみずしく描く物語。本作が第1回長編作品となるスタジオコロリドが制作を担い、監督を大学在学中に発表した自主制作作品『フミコの告白』(09)で国内外の賞を多数受賞し、『陽なたのアオシグレ』(13)で劇場デビューを果たした石田祐康が務める。

たくさんのペンギンに乗ったアオヤマ君と、彼の冒険の鍵を握る“お姉さん”が描かれたメイン・ビジュアルが印象的。謎とワクワク感あふれるビジュアルだが、弭間が本作のプロモーションでもっとも重視したのは「大人にもしっかり観てもらえる映画にすること」、そして「スタジオコロリドの魅力を全面的に出していきたい」という2点だという。

「小学生が主人公なので、子どもの映画、ファミリー映画と思われがち。でも、大人の方々が楽しめる映画として伝えたかった」と想いを明かす。「高校生や大学生、20代を中心とした大人の方々が、自分の小学生時代を思い出して懐かしんだり、それを新たなエネルギーにしてもらえるような映画。そんな魅力を伝えたいと思っていました。そこは、宣伝でもかなり気を遣ったポイントです」。

スタジオコロリドの『台風のノルダ』(15)の宣伝も担当し、彼らの作り出す世界観の魅力をひしひしと感じていた弭間だけに「ぜひこの機会に、幅広い方々にスタジオコロリドの魅力を知ってほしい」との想いも強い。「スタジオコロリドの一番の魅力は、“若さ”。石田監督自身もそうですし、スタッフも若い方が多いです。長編は今回が初めてで、公開館数200館という規模で大きく羽ばたけるチャンスをもらえている」。

少年の成長と無限の可能性を描くストーリーと、“若さ”を持ったスタジオコロリドの相性はぴったりにも感じる。「スタジオコロリドの作りだすものには、まだ荒削りな部分もたくさんあって。もっとよくなるだろう、ここはもっと磨けるんじゃないかという点があることが、一緒にやっていてすごく楽しいんです。成長を見届けたくなる」と目尻を下げるなど、弭間自身、スタジオコロリドに親心を感じている様子。

かわいらしいペンギンにもスタジオコロリドらしさが詰まっているといい、「キャラクターから受ける、柔らかな印象も特徴だと思います。私は20世紀フォックスに長く在籍していたので、『アイス・エイジ』シリーズも担当していたのですが、海外では人気でも、日本ではヒットしなくて(苦笑)。日本で受け入れられるためには、柔らかさや丸さを感じさせるキャラクター造形が必要なんだなと思ったんです。本作のペンギンは、とても愛らしい印象があります。スタジオコロリドは、石田監督をはじめ30歳くらいのスタッフが多く、ある意味、物があふれた時代に、英才教育を受けているような世代。“幅広い人々に受け入れられるものはなんなのか”を察知する感性が備わっているのではと感じています」と話す。

これまでも、『劇場版 PSYCHO-PASS サイコパス』(本広克行総監督、塩谷直義監督)、『君の名は。』(新海誠監督)、『夜は短し歩けよ乙女』(湯浅政明監督)といったヒット作を手掛けて、常に監督たちと二人三脚となり、作品を世に送りだすサポートをしてきた。「皆さん、一生懸命、命をかけて作品をつくっています」と監督たちに敬意を表し、「私は宣伝担当なので、作品をつくることはできないけれど『皆さんが生みだした作品をひとりでも多くの方々に届けたい』との想いで取り組んでいます。“作り手の皆さんについても紹介する”ということは、いつもやっていきたいこと。また、宣伝もなるべく早いタイミングで参加させていただき、作り手の方と宣伝が“分業”ではなく、一緒に歩んでいけるといいなと思っています」と宣伝の醍醐味を語る。

そんな弭間から見た、スタジオコロリドの可能性とは?「本作は、難しいSF要素もたくさん含まれた作品です。でもすでに観てくださった方に聞いてみると、それを飛び越えるようなワクワクを感じていただけている。それは彼らの画力のなせる技。彼らは、これからもっと伸びるだろうなと思っています。10年、20年と見届けていきたいです」。

取材・文/成田 おり枝

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