大杉漣最後の主演作『教誨師』が完成!光石研らキャスト陣が敬意と感謝を表明
400作品以上のドラマ・映画に出演した名バイプレイヤー・大杉漣の最初のプロデュース作にして最後の主演作となった『教誨師』(10月6日公開)の完成披露試写会が21日、東京・神楽座で開催。玉置玲央、烏丸せつこ、五頭岳夫、小川登、古舘寛治、光石研、佐向大監督が登壇し、今年2月21日に早逝した大杉の死を悼んだ。
本作は教誨師の男と6人の死刑囚が繰り広げる会話劇。月に2回拘置所を訪れて死刑囚と面会する牧師の佐伯保は、彼らが自らの罪を見つめ悔い改めることで残り少ない“生”を充実したものにできるよう、そして心安らかに“死”を迎えることができるように彼らと親身に向き合っていく。そんな中、佐伯自身も長い間封印してきた過去に思いを馳せるようになる。
この日登壇したキャスト6名は全員が劇中で死刑囚を演じ、“教誨室”と呼ばれる狭い室内で大杉と1対1で演技に臨んだ。そのため撮影中には大杉以外のキャストと顔を合わせることがなかったという。大杉とともに日本を代表するバイプレイヤーとして活躍し、ドラマ「バイプレイヤーズ」シリーズでも共演した光石は「今回は大杉さんの胸を借りて、2人だけのシーンをやれるという喜びが強かった」と述懐。
そしてキャスト陣はそれぞれに、大杉と2人きりの芝居で緊張したことや、圧倒的なセリフ量に苦労したことを語っていく。さらに本作が映画初出演となった玉置は「現場の雰囲気がすごく良くて、きっとそれは漣さんが作ってくださったもの。その中で伸び伸びと自由に演技ができて本当にありがたかった」と振り返る。
すると佐向監督も「プロデューサーという肩書き以上に、そして主演俳優として以上に、この映画を支えてくれたと思っています」と感謝を語り、現場で大杉がほかのキャスト陣に温かい食事をしてもらおうとケータリングを用意してくれたことや、サラダを作ってくれたことなど、大杉の人間力の大きさを感じさせるエピソードが次々と語られた。
最後にキャストを代表してマイクをとった光石は「実は今日、ここに来る前に大杉さんのお墓にお参りに行ってまいりました」と明かす。そして「以前僕は、俳優の気持ちだとか精神などは映らないんだと偉そうなことを言っていました。すいませんでした。この映画には、大杉さんの魂、気持ち、顔も手も身体も、すべてが映っております。俳優・大杉漣を浴びて帰ってください」と、これから作品を鑑賞する観客に向けて力強く呼びかけた。
取材・文/久保田 和馬