パッケージ発売記念!「おっさんずラブ」脚本家・徳尾浩司が制作秘話を惜しみなく語る
33歳のモテない男と、上司&後輩の3人の“おっさん”がピュアすぎる恋愛劇を繰り広げ、一躍ブームになったラブ・コメディ『おっさんずラブ』が待望のパッケージ化。田中圭、吉田鋼太郎、林遣都ら芸達者な俳優陣の熱演とひねりの効いたストーリー展開に胸キュンセリフ満載で視聴者の心をつかんだ。そんな話題作を手掛け、注目される脚本家・徳尾浩司氏に、制作秘話を聞いた。
「第1話の放送後には、最終話を書き終えていたんです」
――最終回後も未だに“おっさんずロス”と騒がれるほどのブームです。してやったりという気持ちはありますか?
「プロデューサーも含め、誰もないと思います(笑)。ただ、放送中からずっとSNSやツイッターで盛り上がりは感じていて。それを覗き見して、一緒に楽しんでいる気分でした」
――そんな視聴者の熱い反響が、本編の内容に反映されたことはありましたか?
「実は、第1話の放送が終わるころには、最終話の第7話を書き終えていたんです。ネット上で、“〇〇と〇〇は絶対に別れませんよね”とか書き込みがあっても、“ごめんね。もう書いちゃったんだよね”と心の中で謝ってました。本作は単発ドラマ(16年12月に放送)がベースになっているので話の流れも予想がつくんですけど、“違う展開があるんじゃないか議論”もあり、皆様の想像力のすごさには驚きました!」
――シナリオにはいつごろから取り掛かっていたんですか?
「単発ドラマの後、割と早い段階で“連ドラをやりましょう”ということが決まって。17年の夏から始めました。連ドラって、急に呼ばれて取り掛かることが多い中で、半年以上も前から準備できることは稀なこと。3話ぐらいまで書いて、この設定を変えようとか。行ったり戻ったりしながら進めていきました」
――男性同士の恋を描くうえで、最も意識したことは?
「まず現実に悩んでいるLGBTの方たちを傷つけることになってはいけない、ということが大前提としてありました。でも、僕自身はこのドラマではラブコメディをやりたい。それで、どんな恋愛であっても、“人が人を好きになることはしんどいし苦しい”。そういう普遍的なことを笑いに転じたら面白くなるんじゃないかと考えました。だから、設定として、このドラマでは多様な恋愛が行き交う、今よりは半歩先の世界を舞台にしました」
「タイトルが“ダンディズラブ”だったら、当たらなかったでしょうね(笑)」
――ところで、タイトルの“おっさん”ですが、その設定は?
「僕がいま、39歳で、自分にはおっさんの自覚はあるんですが、田中圭さんは34歳ですから、おっさんというにはかわいそうかなと(笑)。でも、プロデューサーの貴島(彩理)さんから見たらみんなおっさんなのかもしれないし、このドラマでいう“おっさん”には愛があって、きっと年齢のことではない。その目線が良かったんじゃないかなと思います」
――タイトルを決めたのは?
「貴島さんです。もし、タイトルがおっさんじゃなくて“ダンディズラブ”だったら、当たらなかったでしょうね(笑)」
――胸キュンなシチュエーションやシーンが詰まっています。なにか影響を受けていますか?
「子どものころに『ママレード・ボーイ』などの少女漫画を読んでいたので、そのニュアンスが端々に見られると思います。また中学生のころに観ていた月9ドラマが王道の恋愛展開で、すれ違いやもどかしさといった描写にも影響を受けていますね。でも、いまの時代は携帯があるからすれ違いはないし、告白もLINEで…と情緒も生まれにくい。だから劇中では大事な場面で携帯を忘れたり、手紙で告白したり、あえてアナログにしています。そんなところが、上の世代には懐かしく、下の世代には新鮮に見えたんじゃないかと」
――春田役の田中さん、黒澤部長役の吉田さんは単発からの続投ですね。2人のセリフはあて書きですか?
「そうです。だからシナリオを描いている時は、舞台を書いているような感覚でした」
――田中さんのくずれっぷりや吉田さんの乙女なキャラに林さんのドSぶりなど演技にも熱が入ってますよね。
「今回はオリジナルなので、原作に遠慮する必要もなく、役者さんも演じることにとても前向きで役を膨らませやすかったはず。それに、舞台をやっている方たちなので、現場でカットをかけてもずっと芝居を続けているんです。6話で牧が風邪で倒れて、彼を春田が2階に運ぼうとするというところがあるんですが、シナリオにはないところまで、田中さんと林さんは演じてる。きっと春田と牧はこうしていただろうと想像してやっているんです。台本には書かれていない2人の関係がふわーっと滲みでてきていてたなと思います」
――そのほかに、役者さんの驚きの演技ってありましたか?
「眞島(秀和)さん演じる武川が飲み会の席で、部下の栗林(金子大地)に『マロのこういうところがダメなんだ』とマジメに意見しながら、テーブルの下で牧の手を握って指を絡めてるんです。その時の仕事トークは、もうすごいアドリブです(笑)」
――胸キュンなセリフはどうやって考え付くんですか?
「例えば、6話で風邪を引いた牧がいきなり春田にキスをするんですが、その後、どう言ったらいいかなと考える。まず一番普通なセリフを考えて。でも、これじゃあ普通だからと、今度はトレンディドラマっぽいセリフを考える。だけど、これは行き過ぎだなと。いくつか書いて調整していく感じですね」
「制作発表でも、春田と牧がしょっちゅう目を合わせてるんです」
――続編を期待する声も多いですが。
「脚本を書いた段階では、春田が牧にプロポーズをして終わらせましょうということで、書きました。だから、恋愛ドラマとしては区切りがついています。でも続編を期待していただく声は純粋にうれしいし、ありがたいです。このチームとしては別の企画でもぜひまたやりたいと思います」
――パッケージ版で改めて「おっさんずラブ」を楽しんでほしいところは?
「単発版の春田は男っぽいんですけど、連ドラ版はかわいいんです。田中さんが演じ方を少し変えているんです。ちょうど今回のパッケージに単発版が入っているので、その差を比べてみてください。また特典映像として、制作発表の模様も入っているんですけど、春田と牧がしょっちゅう目を合わせてるんです。それを見て、2人は付き合っているなと思うほど、カップルあるある状態(笑)。そんな役柄になりきってる田中さんと林くんは見ものだと思いますよ」
●徳尾浩司プロフィール
1979年生まれ、大阪府出身。脚本家、演出家。ドラマの代表作は『きみが心に棲みついた』(18)、『スリル!~赤の章・黒の章』(17)、『徳山大五郎を誰が殺したか?』(16)、『ハードナッツ!』(13)など。映画の最新作『走れ!T校バスケット部』が11月3日(土・祝)より公開される。
取材・文/前田かおり
「おっさんずラブ DVD-BOX」/17,100円+税
「おっさんずラブ BD-BOX」/21,600円+税
販売元:TCエンタテインメント
徳尾浩司氏のインタビューと「おっさんずラブ」の紹介は、
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