上映時間4時間38分という長さに込められた重いテーマとは?
映画の上映時間といえば2時間前後のものが主流だが、10月2日(土)公開の『ヘヴンズストーリー』はなんと上映時間が4時間38分という超大作だ。
本作は全9章で構成されていて、物語は、両親と姉を殺された8才の少女サトが、祖父に引き取られるところから始まる。サトはテレビの中で「法律が許しても、僕がこの手で犯人を殺してやります」と強く言い放つ人物を見る。妻子を殺されたトモキだった。その日から、サトにとってトモキは英雄になり、という導入から始まり、劇中には20人を超す主要キャラクターが続々と登場。それぞれが重い宿命を背負いながら、復讐を乗り越えた先にある再生を目指す姿が壮大なタッチで描かれる。
ちなみに、尺の長い邦画といえば、ベルリン国際映画祭国際批評家連盟賞を受賞した『愛のむき出し』(09)が3時間57分、日本アカデミー賞を受賞した『沈まぬ太陽』(09)が3時間22分という長さで話題になった。また過去にも、黒澤明監督の代表作『七人の侍』(54)が3時間27分、傑作推理小説の映画化『飢餓海峡』(65)が3時間3分という、3時間越えの邦画があった。
しかし、なんと言っても極めつけは『人間の條件』(61)だろう。この作品は全6部構成になっていて、上映時間は9時間31分という破格の長さなのだ。商業映画としては最長の作品ということで、ギネスブックにも掲載されたことがある。劇中では“戦争における人間性”という重いテーマを扱っているが、『ヘヴンズストーリー』も“罪と罰”という重いテーマが描かれているので、案外、両作には通じるところがあるかもしれない。
重厚なテーマをきちんと描くには、カットできないシーンがたくさんあり、どうしても上映時間が長くなってしまうのだろう。本作は4時間38分という長い尺に込められたテーマとしっかり向き合うことで、忘れがたい体験ができりであろう珠玉の1本だ。【トライワークス】