池松壮亮と蒼井優の出会いは12歳の時。初の本格タッグを経て「池松くんがいる日本映画界っていいな」
鬼才・塚本晋也監督初の時代劇『斬、』の初日舞台挨拶が、11月24日にユーロスペースで開催され、主演の池松壮亮、蒼井優、中村達也、前田隆成、塚本監督が登壇。池松は本作の脚本について「本当にすばらしかったんです。新幹線で読んで小躍りしました」と興奮しながら語った。
池松は「1本の刀のように洗練されていて、すごくシンプルで強度があって。絶対にこれをやらなければいけないと思いました。俳優をやってきて、人よりも日本映画に絞って、良いところも悪いところも見てきて、無力ながらも、対峙してきました。そうやって20代を生きてきて、祈りのようなものが、この映画のかき出すエネルギーと自分のなかでマッチしました」と熱い想いを吐露した。
しっかりと共演したのは初めてとなった池松と蒼井。池松は蒼井について「よく会う人でしたが、これだけしっかり向き合ったのは初めてで。蒼井さんは、みんなが映画に向かえるような空気を作れる人なので、だいぶ助けてもらいました。ものすごく自由なせめぎ合いや攻防ができたんじゃないかと思います」と感謝した。
蒼井は池松について「初めて会った時は、池松くんがまだ12歳で、本当に小っちゃくて。今回ちゃんと組んでみて、12歳の時と印象は変わらないんです。もともとあまり子どもっぽくない子どもだったので、このまま小っちゃくなった感じ」と言うと、池松から「嫌ですね」と苦笑しながらツッコミが入る。
蒼井も笑いながら「本当に頼もしいなと。池松くんがいる日本映画界っていいなと思いました」と池松への信頼関係を口にした。
『斬、』の舞台は、開国するか否かで大きく揺れ動いていた江戸時代末期。浪人の都筑杢之進(池松壮亮)は、隣人のゆう(蒼井優)やその弟・市助(前田隆成)たちと、穏やかに暮らしていたが、ある日、剣の達人である澤村(塚本晋也)が現れ、杢之進の腕を見込んで京都の動乱に参戦しようと誘いをかける。
塚本監督は、自身が監督した戦争映画『野火』(15)を作った時と同じように、いまの時代への不安を感じ、本作を手掛けたそう。「ますます恐ろしい時代になってきました。そういう世の中になっていくことに対して悲鳴のようなものを感じ、いましかないと思って作った映画です」と力強く語った。
『斬、』は、第75回ヴェネチア国際映画祭コンペティション部門にアジアで唯一選出された作品で、その後トロント国際映画祭、釜山国際映画祭など名だたる映画祭を席巻し、第51回シッチェス・カタロニア国際映画祭では最優秀音楽賞を受賞した。
取材・文/山崎 伸子