香港映画界に降臨した“次世代ミューズ”アンジェラ・ユン、目標はあの国際派女優!
ウォン・カーウァイ監督やガス・ヴァン・サント監督など、世界中の名匠たちから厚い信頼を寄せられているカメラマン、クリストファー・ドイルと新鋭監督のジェニー・シュンが共同でメガホンをとった『宵闇真珠』(公開中)。主人公の少女役に抜擢されたアンジェラ・ユンを、撮り下ろしインタビューした。本作の魅力を“郷愁感漂う風景”と語る彼女は、共演したオダギリジョーについて「とてもクールで無口な人だけれど、すごく安心感を与えてくれる人でした」と振り返る。
15年にモデルデビューを果たしたアンジェラは、シャネルやシュウ ウエムラなどの一流ブランドの広告塔に選ばれ“アジアの次世代ミューズ”として注目を集めている。また峯田和伸率いる「銀杏BOYZ」のシングルジャケットを飾るなど、日本にも活躍の幅を拡げている彼女は、本作で映画初主演。「モデルの仕事をしている時には必ず自分が主役なので、自分がどういう存在なのかを忘れないように言い聞かせています。でも映画はチームワークなので、主役であってもしっかりと地に足をつけた状態で作品の全体像を把握して、役に臨む必要がありました」と、モデルと女優のスタンスの違いを語る。
本作でアンジェラが演じた少女は、水上家屋が立ち並ぶ香港最後の漁村・珠明村に暮らしており、太陽が当たると死んでしまうのだと父親から守られるように孤独に生きてきた。そんな彼女が、ある日、村に住み着いた異邦人の男と出会い、本当の自分を知ることになる。「実際に役に臨む時にも、孤独感と同時に心の豊かさを意識しました。母親のルーツや外の世界への憧れ、それを現実世界の少女と変わらない心情で演じました」。
そんなアンジェラは、かねてからドイル監督がカメラマンを務めた作品のファンだったようで、直接目の当たりにした彼の演出について「ドイル監督はなにかを撮る時にフォーカスするのではなく、一瞬一瞬に生まれる躍動感をキャッチする人で、とにかく動線の美しさへのこだわりを感じました」と楽しそうに語る。そして「ウォン・カーウァイ監督の『ブエノスアイレス』で、レスリー・チャンとトニー・レオンが喧嘩する場面があるんですが、その動きのリアリティの高さがすごく好きなんです。そういった、ドイル監督ならではの撮影スタイルが本作でも反映されていたと思います」と続けた。
ドイル監督が隆盛を極めたアート系香港映画が急成長中だった、93年に生まれたアンジェラ。子どものころからチャウ・シンチー監督が手掛けるコメディ映画などを観ていたことや、成長するにつれて香港映画を長年支えてきたアクション映画のすごさを実感するようになったことなど、香港映画界への熱い想いを明かす。「個人的に一番好きなテーマは、人の絆や家族愛、ラブストーリーのように人間性が強く描かれている作品です。特にピーター・チャン監督の『君さえいれば 金枝玉葉』と『ラヴソング』がすごく好き!いずれはピーター・チャン監督の映画に出演して、マギー・チャンのような女優になりたいです」と目標を語った。
また最近は日本映画も頻繁に観るようになったというアンジェラ。「岩井俊二監督や是枝裕和監督の作品が好きです。日本映画は感情の描き方がすごく印象的」と言い、「日常生活のさりげない、繊細な部分が淡々と描かれていて、温もりが伝わってくる。これは日本語や日本文学の特徴と関係があるのかもしれませんね…」とじっくりと分析しながら語ってくれた。映画と真摯に向き合う彼女は、今後ますます活躍の場を広げ、ゆくゆくはアジアを代表する大女優へと成長していくことだろう。
取材・文/久保田 和馬