中国市場を開拓するハリウッドスターたち…ニコラス・ケイジがマカオ映画祭に登場
中国の特別行政区、マカオで開催された第3回マカオ国際映画祭にニコラス・ケイジがタレント・アンバサダーとして参加した。ジョン・ウー監督のアクション映画『フェイス/オフ』(97)や、オキサイド・パン監督が手がけた『バンコック・デンジャラス』(08)に主演し、幾度もアジア人フィルムメイカーとコラボレートしたことがあるケイジは、同映画祭のオープニング・セレモニーでアジアの映画の重要性について語った。
ケイジは「アジアの映画は映画史のなかでも屈指の素晴らしいもので、中国映画、日本映画、韓国映画で表現されるスタイルや才能は類稀なるものです。いままで様々なアジアの映画製作に携わることができた私は幸運です。私が映画業界でいまだに仕事できているのは、中国、そして中国の投資家たちのおかげだと意識しています」とコメントした。
続けて「いまでは西洋の俳優達の多くが中国の投資家やフィルムメイカー達の大切さに気づき、関係を築こうとしています。中国が映画界の将来を握っていることは確かですから。だから私は今回マカオに戻ってきて、みなさんにお礼がしたかったのです」と語った。
ケイジが言及しているように、ハリウッドの俳優達が中国の映画市場を意識していることは確かだ。米ハリウッド・リポーターによると、マイケル・ダグラスが特別出演した中国製作の映画『カイジ 動物世界』(福本伸行の人気漫画「賭博黙示録カイジ」が原案)は、今年の公開早々2週間で4億元(約66億8000万円)を超える興収を記録。
シャオ・ファン監督が重慶爆撃を描いた3D映画『大轟炸(原題)』(18)にはブルース・ウィリスが出演するなど、過去にアジアの俳優らが共演を夢見たハリウッドのビッグ・スター達が中国映画に出演する傾向がみられる。
アメリカの映画関係者がアジアに移行する傾向は俳優だけではない。中国で製作される大作映画のほとんどにハリウッドの有名なプロデューサー、撮影監督や映画音楽の作曲家、VFXアーティストなどが名を連ねている。
大手エージェンシー、CAAチャイナの旧代表、ジョナ・グリーンバーグはこの傾向に関して「急成長する中国の映画市場と製作需要に、現地製作陣のプロも追いつけていないんです。中国のプロデューサーやスタジオ、投資家たちも、製作部の代表には経験がある人を探しています。国内にそのような人材がいなければ、国外で見つける必要があるんです」と語っている。
現在9兆円を超えると言われる中国の映画市場は、20年には米国を追い越すと予想されている。一方米国では、数え切れないほどのテレビドラマが製作され、またストリーミング配信が普及するにつれ、劇場公開のために製作される映画のマーケットとニーズが変化している。
映画は高予算の超大作映画、いわゆるブロックバスターか、低予算のホラーやコメディといった限られたジャンルに集中し、ドラマ作品やラブコメなど過去にはヒットを記録した種類の映画の製作が著しく減少しているのは、米国のフィルムメイカーや俳優らが痛感している。
ニコラス・ケイジやマイケル・ダグラスなど、劇場映画の最盛期に活躍したハリウッド・スター達は、中国を新たなる活躍の新境地として目を光らせているのかもしれない。
文/小池かおる