『シュガー・ラッシュ:オンライン』のアニメーターが語る、ディズニープリンセスの私服の製作秘話
ゲームの裏側を舞台に、ゲームのキャラクター、ラルフとヴァネロペの冒険と友情を描くシリーズ最新作『シュガー・ラッシュ:オンライン』(12月21日公開)。今回、本作のキャラクターデザインを統括した、大阪生まれ、カナダ育ちのアニメーター、アミ・トンプソンを直撃!歴代のディズニープリンセスが一同に集うシーンの制作秘話から、キャラクターへの思い、彼女が影響を受けた日本のアニメ作品などについて話を聞いた。
レースゲーム「シュガー・ラッシュ」の天才レーサー、ヴァネロペと、彼女の大親友でゲーム内での悪役、ラルフ。ある日、ゲーム機のハンドルが壊れてしまい、交換部品を調達しようと、2人はゲームの世界を飛び出し、インターネットの世界へ入り込む。第46回アニー賞で、アニメーション映画賞ほか全10部門にノミネートされ、来年2月2日(現地時間)に行われる授賞式にも期待がかかっている。
細部までこだわりが!ディズニープリンセスの私服たち
キャラクターデザインは、監督のリッチ・ムーアやフィル・ジョンストン、他の制作部門のスタッフ陣と密に相談しながら手掛けていくというアミ。「キャラクターの服を1つ作るにしても、CGのスタッフと素材から考えていきます。いろいろなステップを1つ1つこなしていくので、かなり時間がかかるんです」。
本作でディズニー・ファンを興奮させそうなシーンが、ディズニープリンセスたちが一堂に会するくだりだ。アミによると、特に苦労したのが、もともと2Dで描かれたプリンセスをCGで表現し直すことだった。
「完成されたきれいなデザインを崩したくなかったので、そこが1番のチャレンジでした。たとえば白雪姫をそのままCGにしちゃうと、デザインがのっぺりしてしまう。また、服の生地がフェルトなのか、コットンなのかと、素材も考えて作らないといけなかった。髪もCGだと頭皮から1本ずつ生やして作ることになるので、それら全部にこだわって作りました」。
なかでも、ディズニープリンセスたちがラフな私服で女子トークをするシーンに注目。アミいわく「私服については、私だけではなく、スタッフ全員でアイデアを出し合いました。なぜなら、みんながディズニープリンセスの大ファンだから」。
Tシャツのプリントにも各キャラクターのバックグラウンドが反映されている。「たとえば白雪姫は、毒リンゴを食べて生き残った誇らしいサバイバーということで“ポイズンアップル”のプリントにしました。シンデレラはカボチャと“G2G”で、これは“Got To Go”“もう行かなくちゃ”という意味のスラングです。ポカホンタスは、月をバックに吠えるオオカミと“BLUE CORN MOON”で、これは主題歌『Colors Of The Wind』のフレーズから取りました」。
『メリダとおそろしの森』(12)のメリダは、母親がクマにされるということで、カントリー風のシャツとなった。唯一、本作だけディズニー/ピクサー作品で、他のプリンセスから「スタジオが違う」とツッコまれるシーンが笑いを誘う。
「実は、ピクサーのチームから『メリダを入れてほしい』と言われました。メリダがからかわれるシーンがおもしろいでしょ。とはいえ、2つのスタジオは仲がいいですよ」。
シャンクの造形は、ガル・ガドットあってのもの
ニューフェイスのキャラクターでは、クールなレーサー・シャンクのデザインに1番時間をかけたそうだ。
「最初に監督からストーリーを聞いた時、プロレスラーのような見た目のデザインにしたのですが、そこからストーリーと共にどんどん変わっていき、何十パターンのシャンクを作りました。ようやくボイスキャストが『ワンダーウーマン』のガル・ガドットに決まり、そこからガルの出で立ちや性格、仕草などを取り入れたいと思い、一気に今のデザインへとまとまっていきました」。
もちろん、メインキャラクターのヴァネロペとラルフも前作から進化し、より表情がエモーショナルになっている。
「ヴァネロペは好奇心旺盛で新しいものが大好きですが、ラルフは逆にそういうものに馴染めない。でも、お互いに大親友なんです。インターネットの世界に行ってから、2人の友情がどうなっていくのか、本当の友情とは何なのかを感じ取っていただきたい」。
特に、後半でラルフが見せる悲しげな表情には胸が締めつけられる。「ヴァネロペやラルフには、前作を含めて何年も携わってきたので、感情移入をしてしまいます。私たちアニメーターは、彼らをただの画ではなく、ちゃんと実在するキャラクターとして見ているので。ヴァネロペたちが、まるで自分の子どものように思えてくるんです。だから、ストーリーが良い方向へ向かうと、『良かったね』と語りかける感じで、すごく思い入れが強いです」。
大阪生まれ、カナダ育ちのアミは、日本とアメリカ両方のアニメーション作品を観て、アニメーターの道を志したそうだ。「日本にも才能ある方々がたくさんいらっしゃいます。私は子どものころからディズニー映画は全部観ていましたが、日本のスタジオジブリ作品や『セーラームーン』も大好きでした。自分もいつか、ああいうすばらしい画を描けたらと思って、日々頑張っています」。
取材・文/山崎 伸子