『万引き家族』凱旋上映で是枝監督がティーチイン。アカデミー賞ノミネートの心境は?
第91回アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされた『万引き家族』の凱旋上映が、2月8日より全国100館規模でスタート。その初日に、TOHOシネマズ日比谷にて、是枝裕和監督登壇のティーチインイベントが開催された。
『万引き家族』は昨年公開され、第71回カンヌ国際映画祭・コンペティション部門で最高賞であるパルムドール受賞をきっかけに、国内外の映画賞でノミネーション、受賞を果たしてきた。公開スタートから8か月目を迎え、動員数370万人、興行収入45億円を突破している。
海外の観客の反応について「自分たちの国の隣の町で起きていてもおかしくない物語。そういう身近な自分たちの生活と比べながら作品を捉えてくれるお客さんたちがいてくれて、それで広がっているんじゃないかと」と語ったあとで「役者さんがみんなすばらしい。海外の映画賞でも、役者さんのアンサンブル演技を評価していただいた賞が何本かあって、それがうれしかったです」と俳優陣を称えた。
観客から、片山萌美演じる母親から佐々木みゆ演じる娘が虐待されるシーンをどう撮ったのか?と、子役の演出について尋ねられた是枝監督。
「あのシーンは片山さんの演技が良すぎてね。『触んないでよ』と怒ったら、みゆちゃんが『嫌だ、もう撮りたくない』と言い始めて。無理やり撮るのもちょっと違うので、お母さんと散歩に出てもらい、リセットしてもらった。そこから『片山さんは本当はやさしいんだよ』と誤解が溶けて、そこから作り直しました。役と相まって本人が出てくるので、それを受け止めつつ、上手く役に誘導するってことをやりました」。
また、今回、アカデミー賞にノミネートしたことについては「そんなに特別な想いがあるわけでもないですが」と前置きしたあと「ヨーロッパの映画祭では、そこでの経験を踏まえて次を考えるんですが、今回は自分が全然タッチしていなかったところに転がっていって、あとからそれを追いかけている感じ。本当に自分がいていい場所なのか?と迷いながら、レディー・ガガと写真を撮ったりしていました」とおちゃめに笑う。
「ただ、英語をしゃべれないのが、自分と、『ROMA/ローマ』に出ていた女優さんしかいなくて。ノミネートされたことは本当に光栄だと思っていますし、オスカー・ノミニーズ・ランチに出て、それはそれですてきな時間でしたが、ここでこの先、自分が映画を撮っていくことがあるのだろうかと。今回の経験を踏まえ、次に誰となにをやるのかと、ぼんやり考えています」。
米アカデミー賞のほか、第72回英国アカデミー賞外国語映画賞にもノミネートされている『万引き家族』。現在、カトリーヌ・ドヌーヴを迎えた新作を撮り終え、編集中で多忙を極める是枝監督だが、2月11日(月・祝)(英国時間2月10日)に開催される英国アカデミー賞の授賞式にも参加予定だ。是枝監督は「倒れないように頑張ります。また、ぜひ新作でお会いできればと」と最後に笑顔を見せた。
取材・文/山崎 伸子