有村架純の“しなやかな女優力” 『コーヒーが冷めないうちに』「中学聖日記」の塚原あゆ子監督が感嘆
幅広い作品で実力派女優としての存在感を発揮し、いまや世代を代表する女優となった有村架純。映画『コーヒーが冷めないうちに』のDVD&ブルーレイが3月8日(金)よりリリースされる。ドラマ「中学聖日記」でも有村とタッグを組んだ塚原あゆ子監督は、「『コーヒーが冷めないうちに』で言うならば、コーヒーをこぼしてしまったとしても、それを拭きながら自然に芝居を続けるのが有村さん。『どうしよう』と戸惑ったりしないんです。『中学聖日記』の第2話での聖(有村)と勝太郎(町田啓太)のキスシーンでも、有村さんは“天才だ”と思ったことがありました」と、どんな出来事にもその役として対応する、有村のしなやかな女優力に舌を巻く。18年の彼女を見つめ続け「幸せでした」と喜びを噛みしめる塚原監督のインタビューから、女優・有村架純の魅力に迫る。
『コーヒーが冷めないうちに』は、「本屋大賞2017」の候補になるなどベストセラーとなった川口俊和の同名小説と、その続編を基にしたファンタジーテイストの人間ドラマ。店内の“ある席”に座ると、望んだとおりの時間に戻ることができるという喫茶店「フニクリフニクラ」を舞台に、様々な後悔を抱えた人々のドラマを描く。「リバース」「重版出来!」「アンナチュラル」など、数々のドラマで高い評価を受けた塚原監督が、満を辞して映画監督デビューを果たした。
有村架純を「天才だな」と思った瞬間とは?
有村が演じたのは、叔父と一緒に喫茶店「フニクリフニクラ」を切り盛りするヒロインの時田数役。母との悲しい思い出を抱えながら、喫茶店に訪れる人々のドラマを静かに見守っていた数だが、常連客である大学生の新谷(伊藤健太郎)と出会い、次第に惹かれ合っていく。
本作において、特に印象深い有村の芝居は「数と新谷がだんだんと近づいていく、その表情の変化」だという塚原監督。「喫茶店という小さな世界で生きてきた女の子が、新谷と出会い、だんだんと自由になっていく。有村さんは、数が多彩な顔をするようになっていくさまを、非常にすばらしく演じています。それに引っ張られるように、ちょっとチャラかった新谷もどんどん変わっていく(笑)。有村さんと伊藤くんのセッションは、とてもおもしろかったですね」。
また有村がどんなハプニングにもその役として応じる姿にも、目を見張ったという。「『コーヒーが冷めないうちに』で言うならば、コーヒーを注ぐ時にこぼしてしまったとしても、それを拭きながら自然に芝居を続けるのが有村さん。『どうしよう』と戸惑ったりしないんです。こぼれたらこぼれたで、そのまま演じ続けるんです」。
有村が中学生の教え子に惹かれていく女教師の聖役を演じたドラマ「中学聖日記」でも、同じように感じたことがあったそう。「2話で聖(有村)と勝太郎(町田啓太)のキスシーンがあったんですが、歩きながらキスをする場面なので、ちょっとうまくいかなかったりして。有村さんはケタケタと笑いながら、“聖として”そのシーンを続けた」と振り返りつつ、「天才だなと思いました」と有村の対応力に感嘆。「ケタケタと笑う姿が、ものすごく自然だったんです。ちゃんと、聖だった。有村さんは突然起きたことにも、役として無理なく対応するんです。そういうことができる方って、実は少ないんですよ。すごいんです」。
再タッグを組むとしたら、「有村さんの笑顔をたくさん収められる作品」と希望
さらなる魅力を分析してもらうと、塚原監督は「有村さんは撮影中はずっと、数なり、聖なり、その役として生きている。数も聖もつらい気持ちを抱えている女性ですので、『どんな心境なのかと考えていると、撮影が休みの日も苦しい』というお話をされている時もありました。根を詰めて、その役として撮影期間を過ごす方だと思います」と没頭型の一面もありながら、「それでいて、スイッチのオンオフができる方。『差し入れです!』って元気な笑顔で持ってくる時なんかは、普通の有村さんですから。とても素敵なお芝居との付き合い方をされていると思います。それは長く役者さんを続けていくうえでも、とても大事なこと」と切り替えのうまさも有村の武器だと語る。
「役者になるべくして、なった人」とその女優力を絶賛する塚原監督。「数は自己主張が強いタイプではないんですが、それでいて彼女がそこにいるだけで、どうしても目で追ってしまう。それは有村さんの力以外のなにものでもないし、主演をやる人の天賦の才能だと思います。これからがますます楽しみです」と有村の今後にも期待を膨らませる。
塚原監督の担当した2作品だけでなく、NHK朝の連続テレビ小説「ひよっこ」、松本潤演じる教師との禁断愛を描いた映画『ナラタージュ』(17)など、振り幅のあるキャラクターに挑む姿勢も大きな魅力で、「挑戦的に成長されていく方」と話す塚原監督だが、もしまた有村とタッグを組むとしたら「ご本人はよく笑う、とてもキュートな方なんです。『コーヒーが冷めないうちに』も『中学聖日記』も笑顔を封印している時間の長い役でしたので、有村さんの笑顔をいっぱい収められる作品も撮ってみたい」という。「有村さんが年齢を重ねるごとに、ぜひご一緒したい。そうできるよう、私も精進します」と奮起していた。
ドキドキするキスシーンを撮る秘訣を直撃!
『コーヒーが冷めないうちに』では数と新谷、「中学聖日記」ならば聖と黒岩(岡田健史)のドキドキするようなキスシーンも話題を呼んだ。キュンとするキスシーンを撮るうえでの秘訣は、「男の子側に『ちゃんとやれよ』って言うことかな。女の子が仕掛けるキスなら、女の子に言う!」とニッコリ。
「やっぱり大切なのは緊張感。『頑張れよ』とかむやみに言ってみる(笑)。そうすると人間って、緊張するもの」とのことで、「あとはどの方向からキスをするかを、こちらで決めないとか。『コーヒーが冷めないうちに』のキスシーンは、健太郎くんがタイミングを探っているのがポイント。キスをした後に有村さんが下を向くので、それを気にするリアクションを見せる健太郎くんもとってもおもしろい(笑)。DVDになると、そうやって細かいところまで確認できるのがいいですね。ぜひ繰り返し観ていただきたいです」と楽しそうに教えてくれた。
取材・文/成田 おり枝
『コーヒーが冷めないうちに Blu-ray 豪華版』6800円+税
『コーヒーが冷めないうちに DVD 豪華版』5800円+税
『コーヒーが冷めないうちに Blu-ray 通常版 』4800円+税
『コーヒーが冷めないうちに DVD 通常版 』3800円+税
『中学聖日記 Blu-ray BOX』26400円+税
『中学聖日記 DVD-BOX』20900円+税
『アンナチュラル Blu-ray BOX』24000円+税
『アンナチュラル DVD-BOX』19000円+税