『レオニー』の主演女優が語る、本作との運命的なつながり
世界的彫刻家イサム・ノグチの母レオニー・ギルモアの半生を描く感動作『レオニー』のタイトルロールを演じたエミリー・モーティマー。ひとりの日本人詩人と出会ったことで、日本とアメリカの両国で激動の人生を送ることになったレオニーを、エミリーはどうとらえたのか。来日した彼女にインタビューしたら、そこから本作と彼女の運命的なつながりが見えてきた。
時は19世紀末のニューヨーク。名門女子大学を卒業後、教鞭をとっていたレオニーは、日本人の詩人ヨネ・ノグチと出会い、身ごもる。ヨネが彼女を置いて帰国したため、未婚のままひとりで混血の子を出産したレオニー。その後、彼女は産まれた子供イサムと共に東京へ渡る。レオニーを演じたエミリーは、本作のオファーを受けた理由をこう語った。
「ちょうど父から祖母の話を聞いて、何か自分自身とレオニーとのつながりを感じたんです。英国人の祖母はレオニーと同じ時代を生きた女性で、ちょっと似たところがあって。祖母はアーティスト的な面と、ボヘミアン的なところを持ち合わせた人だったようで。祖母を通して、レオニーの人生に何か近しいものを感じました。もちろん、脚本の豊かさ、複雑な構成、日本でのロケ撮影と、全て魅力的な内容だったので、お引き受けしたのですが」。
役作りについては、彼女の夫の祖母の生き方も参考にしたという。「夫の祖母はジュエリーデザイナーでした。私の祖母と共通している点は、強くて独立心がありつつ、とても女性的でエキセントリックだったところです。レオニーもそうで、特に晩年ひとりで生活していた頃はクレイジーで苛立つような面もありました。でも、それらを怖れず、全部見せていこうと思いながら演じたんです」。
さらに、彼女が共感したのは、イサム・ノグチの文献だった。「イサムは、晩年になって、ようやく母との関係性に決着をつけることができたようです。イサムによると、レオニーは自分に多大な影響を与えてくれたんだと。ポジティブな部分では、独立心を培い、勇気をくれた点。その一方で、人生は一筋縄でいかないということも受け止められたと。彼女たちの親子関係は、複雑で難しいところがあったようです。自分も母親なので思うことは、親ってポジティブな面とネガティブな面の両方を子供に与えてしまうってことですね」。
また、松井久子監督からも、現場でかなり刺激を受けたという。「現場では、監督の尽きせぬパッションやエネルギー、何者にも支配されることのないスピリットを毎日感じました。彼女はどんなに状況が暗くなっても、絶対にあきらめることなく進んでいくんです。撮影クルーも俳優も全員が彼女をリスペクトしていました。日本人の女性監督が、自分の企画をアメリカで撮影していること自体がすごいことだから」。
ある意味、海を渡って、7年もかけて日米合作映画『レオニー』を手がけた松井久子監督も“もう1人のレオニー”だったのかもしれない。エミリーは、彼女の祖母たちだけではなく、松井監督からもインスピレーションを受けたのではないだろうか。レオニーの波乱万丈の人生を見事に体現したエミリーの熱演を見て、そう思った。【Movie Walker/山崎伸子】