とある1日の戦いを描く 緊迫のクライシス大作『空母いぶき』
20XX年の日本。もしも日本の領土が何者かに占領されてしまったら、どう行動するべきなのか――。現在も連載中の、かわぐちかいじによる同名コミックを実写映画化した『空母いぶき』(5月24日公開)は、決して絵空事ではない骨太なテーマを、臨場感たっぷりに描いたクライシス・エンタテインメント大作だ。
沖ノ鳥島の西方450kmにある波留間群島初島に、国籍不明の武装集団が上陸したという、平和な日本を突然襲った未曽有の事態。自衛隊初の航空機搭載型護衛艦“いぶき”を旗艦とする第5護衛隊群を中心に、政治家、マスコミ、民間人といった立場の違う人々が、それぞれの信条を胸に、戦後の日本が経験したことのない危機に立ち向かっていく。
物語自体はわずか1日の出来事。しかし、様々な立場の登場人物たちのドラマが並行して描かれるストーリー展開には常に緊迫感があふれ、濃密な24時間がリアルタイムで進行しているような錯覚を覚える。
万一の際には武力行使もいとわない、いぶき艦長の秋津を演じるのは西島秀俊、人命第一で行動してきた副長の新波役に佐々木蔵之介。さらに自衛隊の最高指揮監督権を持つ内閣総理大臣の垂水役に佐藤浩市、偶然現場に居合わせたネットニュースの記者・本多役に本田翼と、日本映画界を代表する俳優陣が集結した。時に対立しながらも、その根底にあるのは、「日本の平和を守りたい」という強い願い。世界情勢が大きく揺れ、不安定な現代だからこそ観るべき傑作が誕生した。
文/石塚圭子【月刊シネコンウォーカー】
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