新海誠監督『天気の子』アフレコ現場に潜入!醍醐虎汰朗&森七菜を支える“新海マジック”とは<写真18点>
驚異的ヒットを記録した『君の名は。』(16)から3年。日本のみならず、いまや世界中が熱視線を送る新海誠監督の待望の最新作『天気の子』(7月19日公開)が、いよいよスクリーンに登場する。声の出演として、主人公の帆高役に醍醐虎汰朗、ヒロインの陽菜役に森七菜というフレッシュな2人が、参加者2000人超のオーディションを経て抜擢となった。いまだ全貌がヴェールに包まれている本作だが、その一端を目撃すべくアフレコ現場に潜入。「最初は緊張していた」という醍醐と森が、新海監督をはじめスタッフ陣の支えによってぐんぐんと成長していく姿が明らかになった。彼らのポテンシャルを解き放った“新海マジック”とはどんなものなのか?アフレコ現場取材と、醍醐&森へのインタビューからその謎に迫る。
天気の調和が狂っていく時代に、運命に翻弄される少年と少女が自らの生き方を選択していく姿を描く本作。東京にやってきた家出少年の帆高が出会った、不思議な力を持った少女、陽菜。2人の美しくもせつない恋物語を、豊かな風景描写と共につづる。
「新海監督はいつも、どんな演技も受け止めてくれる」(醍醐&森)
記者が訪れた日は、帆高と陽菜、陽菜の弟の凪が顔をそろえるシーン。醍醐と森、凪役の吉柳咲良は、アフレコに備えてストレッチをしながら談笑。そこに新海監督も「なんの話しているの?」と顔を出し、和やかな空気がスタジオに流れる。いざアフレコが始まると、それぞれの演技に「素敵です」と声をかけながらも、「もう少し吐息が入るといいかも」「勢いをつけて」「セリフにならないくらいの声で」などスピードやトーン、息のもれ方など、こだわりを込めて緻密な演出をしていく新海監督。
難しいオーダーにも、お互いに励まし合いながら食らいついていく声優陣の姿が印象深いが、醍醐と森は「どんどん伸び伸びとできるようになってきた」と明かす。彼らのアフレコが始まったのは3月中旬のこと。醍醐は「最初のころは、『君の名は。』の新海監督の作品だ、(『君の名は。』の)神木隆之介さんに続いての主人公だ、などといったことをプレッシャーにも感じてしまって」と当初は緊張があったというが、2か月以上が経ち「いまは森さんをはじめ、スタッフの方々とも仲よくなることができて。『自分が帆高である』ということに自信を持てるようにもなってきたので、プレッシャーについて考える時間があるならば、もっと役のことを考えようという意識に変わってきました」と変化があったと語る。
「一言目を出すのがとにかく怖かった」と3月にアフレコが始まった日は、目に涙を溜めていたことを振り返った森は、「私もだんだんと『私が陽菜なんだ』という自信と決意が生まれてきました。いまはプレッシャーはほとんどありません」とキッパリ。「最近は新海監督に『声のお芝居が声優さんっぽくなってきたね』と言っていただいて。声優さんのお芝居を間近で見させていただいて、メモを取りながら学んでいきました。声を出すのが『怖い』と思っていたものが、いまでは『早くやりたい!』と感じているので、成長しているんじゃないかなと思います」と、充実の表情を見せる。
「自信が持てるようになった」と口にする2人だが、どうやらその変化は新海監督がもたらしてくれた様子。醍醐は「新海監督は優しくて、物腰が柔らかくて、僕らと同じ目線に立って教えてくださる監督。リテイクがあっても、必ず『いまのよかったです。でもこちらのほうも見てみたいな』といった優しい言葉を投げかけてくれるんです。演出自体は本当にこだわりを持ってやってくださって、監督が『OK』と言ってくれると、ものすごく自信が持てるんです」。森も「新海監督はいつも最初に『素敵です』と言ってくださいます。そこから演出をしてくださるので、こちらも変なプレッシャーを持たずにいられると思います。新しい演技を出しても、必ず受け止めてくれて。どうなってもいいんだ、やってみようという気持ちになれるんです」と、生き生きとした演技の秘密は、新海監督の懐の深さにあった様子。その優しさに背中を押され、醍醐と森は“挑戦してみよう”という心にも火をつけられていた。
「落ち込んでいると、醍醐くんが『大丈夫だよ!』って。先生みたい」(森)
アレフコで森が悩んだ時には、ムードメーカーぶりを発揮する醍醐が「ドンマイ!」と声をかけるひと幕もあった。醍醐が、森との関係について「作品に対する熱量がすごくて。僕も同じ気持ちなので、一緒に高め合っている感じがするんです」と語れば、森は「どうすればいいのかわからなくなって自己嫌悪に陥ってしまうことがあると、醍醐くんが『大丈夫だよ!』と言ってくれるので、先生みたいな時がある(笑)」と返すなど、大役を得て、プレッシャーを乗り越えるなかで“同志”のような存在になっている2人。
お互いの印象を聞いてみると、醍醐は「本当に、天気みたいだなって思う時があって。さっきまで落ち込んでいたなと思ったら、うまくできて喜んでいたり。パパッと感情が変わる」と笑いながら、「新海監督もおっしゃっていたんですが、森さんは陽菜に近いなと感じる部分もある」と役柄との親和性についてコメント。森は「たまにアフレコ以外の時でも『いまの話し方、陽菜みたいだったよ』と言われることがあって。ずっと陽菜と一緒にいるからかな」と思案しながら、「醍醐くんは、顔が帆高に似てる」と楽しそうに分析。醍醐も笑顔を見せつつ、「東京に出てきて、なにもわからない環境で精一杯に頑張ろうとしている帆高。僕も初めての声優でわからないことだらけだけれど、精一杯に頑張っているというところは、帆高と重なる」と語っていた。
「ものすごく感情を動かされた。風景描写にもきっと圧倒される」(醍醐)
アフレコの休憩中には、作画監督の田村篤がスタジオを訪問。それぞれが演じるキャラクターを描いた色紙を、醍醐と森にプレゼントしていた。醍醐は「『オーディションで初めて見た時から、帆高でした』というメッセージも書いてありました。ものすごくうれしい」、森は「以前、新海監督が『いま製作陣は大変なんですよ』とおっしゃっていたので、私たちになにかできないだろうかと思って、醍醐くんと2人で寄せ書きとイラストを描いたものをプレゼントしたんです。そうしたら、比べ物にならないくらいのお返事をいただいてしまった!うれしいです」と喜び爆発。醍醐によると「スタッフさんに寄せ書きをプレゼントすることは、森さんが提案してくれたんです。いろいろなところに気配りができるんですよ!」とのことで、 “ムードメーカー”の醍醐と“気配り”の森は、周囲も明るくするような、なんともいいコンビだ。
世界が待ち望む新海監督の最新作。醍醐は「楽しくなったり、悲しくなったり、感動したり、ハラハラしたり。ものすごく感情を動かされた」とストーリーに惚れ込み、「『天気の子』というタイトルだけあって、新海監督の作品の大きな魅力でもある風景の描写にも、きっと圧倒されると思います」と期待。森は「Vコンテ(絵コンテを繋いで映像にしたもの)を何度も見ているんですが、作品から感じるものがまったく薄くならないんです。何回見ても、満タンの気持ちになる。初めての経験です」と胸をいっぱいにし、「最近は晴れても雨が降っても、うれしいし、さみしくて。先日は青空に念力で字を書く夢を見て!夢でも天気のことを考えていたんです」とニッコリ。がむしゃらに突き進む醍醐と森の姿を見て、本作が彼らにとって大きな一歩となることを確信すると共に、ますます完成が楽しみになった。
取材・文/成田 おり枝