空気感までリアルに伝わる…『パラダイス・ネクスト』の異国情緒あふれる世界<写真14点>

コラム

空気感までリアルに伝わる…『パラダイス・ネクスト』の異国情緒あふれる世界<写真14点>

妻夫木聡と豊川悦司という実力派俳優の共演によるノワール・サスペンス『パラダイス・ネクスト』が公開中だ。台湾の地を舞台に孤独を抱える男たちの姿を描いた本作は、異国情緒に満ちた世界観が全編に漂っている。

異国の空気感が情緒たっぷりに伝わってくる『パラダイス・ネクスト』
異国の空気感が情緒たっぷりに伝わってくる『パラダイス・ネクスト』[c] 2019 JOINT PICTURES CO.,LTD. AND SHIMENSOKA CO.,LTD. ALL RIGHTS RESERVED

世間から身を隠すように台北で生きる島(豊川)の前に、突如として現れたお調子者でなれなれしい牧野(妻夫木)。彼は初めて会うはずの島のことや、台北に来る契機となった“ある事件”の真相を知っているとほのめかす。その牧野が何者かに命を狙われていると知った島は、彼を連れて花蓮へと向かうことに。そこで出会ったシャオエン(ニッキー・シエ)という女性の存在によって、二人の過去が明らかになり、逃避行は“楽園”を探す旅へと変わっていく…。

路面のウェット感など、さりげないところから台湾の熱帯な気候を感じることができる
路面のウェット感など、さりげないところから台湾の熱帯な気候を感じることができる[c] 2019 JOINT PICTURES CO.,LTD. AND SHIMENSOKA CO.,LTD. ALL RIGHTS RESERVED

本作は、監督とカメラマンを除き、ほぼ現地のスタッフでオール台湾ロケを敢行。登場する圓山大飯店や松江市場などの台北のランドマーク的なスポット、メインの舞台となる花蓮の自然豊かなロケーションもどこか神秘的。また、濡れた道路から伝わる台湾の熱帯的なジメッとした気候や、何気ない混み込みとした街並みのショットから感じられる人々の活気など、映像を通して台湾の空気感がダイレクトに伝わってくるのだ。

【写真を見る】全編台湾ロケを敢行!異国情緒たっぷりの映画とは?<写真14点>
【写真を見る】全編台湾ロケを敢行!異国情緒たっぷりの映画とは?<写真14点>[c] 2019 JOINT PICTURES CO.,LTD. AND SHIMENSOKA CO.,LTD. ALL RIGHTS RESERVED

監督を務めるのは、ホウ・シャオシェン監督の『フラワーズ・オブ・シャンハイ』(98)や『ミレニアム・マンボ』(01)、ジャ・ジャンクー監督の『プラットホーム』(00)や『山河ノスタルジア』(15)など、これまで中華圏の映画人たちの作品で音楽を手掛け、異国の空気感というものと幾度となく向き合ってきた半野喜弘。そんな音に人一倍のこだわりを持つ彼は、この作品でも街の喧騒などの細かな生活音までダイナミックに設計し、台北と花蓮で音に違いをつけたりと、こだわり抜かれた音響により街を立体的に浮かび上がらせている。

ジメッとした空気感が、ノワールな物語とマッチしている
ジメッとした空気感が、ノワールな物語とマッチしている[c] 2019 JOINT PICTURES CO.,LTD. AND SHIMENSOKA CO.,LTD. ALL RIGHTS RESERVED
台湾の人気女優ニッキー・シエも出演している
台湾の人気女優ニッキー・シエも出演している[c] 2019 JOINT PICTURES CO.,LTD. AND SHIMENSOKA CO.,LTD. ALL RIGHTS RESERVED

また坂本龍一を起用した美しくもどこか異国の孤独を感じさせるような仕上がりのテーマ曲をはじめ、台湾先住民の民族音楽など、“登場人物のように扱う”ということを意識した音楽も作品のエッセンスを際立たせているのだ。

空気感が伝わる映像と調整され尽くした音によって、まるで台湾の地にいるかのような異国情緒を味わえる本作。随所に炸裂する監督のこだわりを肌で感じてみてほしい。

文/トライワークス

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