星野源が引きこもりの侍に!? ユニークな時代小説が映画化
「超高速!参勤交代」シリーズの原作者・土橋章宏の時代小説「引っ越し大名三千里」を、「のぼうの城」の犬童一心監督が映画化。無理難題を押し付けられた侍たちが、頭を捻って秘策を繰り出し、乗り越えていくさまが実に痛快! なんと本作のお題は“引っ越し”だ。
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江戸時代の姫路藩。内向的な春之介は、書庫番のお役目をいいことに、引きこもって読書三昧。ところが藩が日田(大分)への国替え(引っ越し)を命じられ、書庫番により知識が豊富だと思われた春之介は、誰もが敬遠する“引っ越し奉行”を押し付けられる。
藩士とその家族全員での移動には桁外れの費用と労力がかかるが、藩の財政はひっ迫中。移動人数1万人、距離600㎞、予算なし。果たしてこのピンチをどう乗り越える!?
まさにドンピシャ、星野源が春之介を好演。“逃げ恥”の津崎にもどこか通じる、不器用だがすこぶる誠実な春之介の魅力が、かめばかむほど増してくる。春之介の幼なじみで武芸の達人・源右衛門に高橋一生。ガハガハ笑いの脳みそ筋肉系男を熱演し、新鮮な境地を開いて魅せる。前任の引っ越し奉行の娘で春之介に協力する於蘭に、演技力抜群の高畑充希が扮して華を添える。
国ごとお引っ越しという、本当に普通にあった歴史的事実に驚きながら、春之介が思いつく秘策に膝を打ち、そこに内包された“侍の矜持や義理人情”の厚さに胸を打たれる。日本人の琴線に触れ、大いに鼓舞してくれるような歴史エンタテインメントだ。
「引っ越し大名 三千里」原作者・土橋章宏のコメント
「引きこもりのような侍を主人公にした小説や映像はあまりないかもしれませんが、実際、写経や俳句ばかり書いていた侍はいたようです。そういうタイプの人は主人公になりにくいのですが(笑)、この作品ではあえてスポットを当てて"やってみたら意外とできるよ!"というテーマにしたら楽しいかなと。時代劇といってもたかだか200年くらい前。人の心はそれほど変わっていないと僕は思う。なるべく現代の人たちが勇気づけられたり参考になる小説を書きたいと意識しています」
「犬童監督からのアイデアだった劇中の"引っ越し唄"など観ていて本当に楽しいものになったと思います。歌詞は僕が考えたんですが、まさか野村萬斎さんが振り付け監修してくださるなんて! 監督と密にやり取りしながら、自分の小説を映像表現としてアレンジしていく作業は楽しかったです」
文=折田千鶴子【シネコンウォーカー編集部】